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環境科学の研究者から見た
オープンデータの利点と現状
(研)農研機構
農業環境変動研究センター
GBIF日本ノードJBIF
大���剛士
<arosawa@affrc.go.jp>
2017/9/28 土木情報学シンポジウム
http://osawa.nomaki.jp/
大澤 剛士(OSAWA Takeshi)
(研) 農研機構
農業環境変動研究センター@つくば
主任研究員
自己紹介
研究データのオープン化、利用、
横断利用の促進に取り組んでいる
•利用側としてのオープンデータ
•公開側としてのオープンデータ
•国内の現状
•利用側としてのオープンデータ
•公開側としてのオープンデータ
•国内の現状
データベース研究者にとって
実験や野外調査のようなもの
http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html
GISデータを利用した
各種研究の推進
研究素材としての地図情報
Osawa et al. (2014) Entomological Science 17:425-431.
Osawa (2015) Environmental Management 55:1160-1167.
Osawa et al. (2016) Weed Research 56: 168-178.
https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do
統計情報を利用した
各種研究の推進
研究素材としての政府情報
Osawa et al. (2013) PLoS ONE 8(11): e79978.
Osawa et al. (2015) Ecological Research 30(5):757.
Osawa et al. (2016) Science of the Total Environment 542: 478-483.
代表的な研究(公開情報を利用)
耕作放棄、圃場整備と
絶滅危惧種分布の関係を全国的に評価
絶滅危惧種の分布地図
耕作放棄地の分布地図
Osawa et al. (2013) PLOS One: e79978
Osawa et al. (2016) Land Use Policy 54: 78-84
圃場整備の分布地図
排他関係
重複関係
政府情報のオープン化
http://www.data.go.jp/
データベース研究者にとって
いわば新しい調査フィールド
利用側としてのオープンデータ
・自身で収集・整備する手間が省ける
・個人では収集できない規模のデータ
(ビッグデータ)
・政府データの活用で
社会ニーズに応えられる可能性
それにより研究が推進
•利用側としてのオープンデータ
•公開側としてのオープンデータ
•国内の現状
オープンデータ以前
公的研究機関として
研究成果やデータを公開
(旧農環研webサイトより公開されていたコンテンツ)
「公開」はポ��シーではない
著作権はどう管理する?放棄?
論文で公表済み=論文引用が条件
特許=利用料を支払う
職務発明プログラム=許可申請
データベース=???
“データベース“について
明確なルールがない!
知的財産の問題
オープンデータ憲章
・原則としてのオープンデータ
・質と量
・すべての者が利用できる
・改善したガバナンスのためのデータの公表
・イノベーションのためのデータの公表
研究データベースの扱いとして
十分な意義づけができる
2013年G8で合意
ライセンスの問題
既に国でもオーソライズされた
利用性が高いライセンスがある
標準化されたオープンデータライセンス
https://niaesvic.dc.affrc.go.jp/
農環研カタログサイト NIAES VIC
研究データのオープン化を
積極的に実施
オープン化ばかりしていたら
オイシイ成果は持っていかれてしまうのでは?
公開のメリット?
論文発表済みのデータを改めていじること
終わったプロジェクトのデータを再解析すること
あまりないですよね
もちろん自分で使ってから
誰かに託せば新しい価値が
付加されるかも?
自分で使わなかったデータ(対象種以外)
副産物で取得したデータ(航空写真とか映像)
誰かが欲しがってるかも?
自分のデータ、全部使う?
誰かに託せば新しい価値が
付加されるかも?
自分が受益者になることも
“誰か“は明日の自分かも?
自分が受益者になることも
耕作放棄地の分布地図2005
時系列の農地面積地図1970-2005
http://agrimeshopen.web.fc2.com/index.html
農業統計(ネ申エクセル)を地域メッシュで
地図化したデータ(論文化済み)を
オープンデータとして公開
自分が受益者になることも
早速利用され、
さらに共同研究のお誘いも
別分野での利用例
新しい研究のシーズ
公開側としてのオープンデータ
・国の方針として示されている
・使いやすい標準ライセンスがある
・公開によってデータに価値が付与され、
自分にとっても利益が得られる
仕事的な観点からも
悪くない状況と言える
所属からの突っ込みは?
最初はアングラで進めました
だんだん時代が追い付いてきました
・農業関係情報のオープンデータ化の推進
農業者の生産性向上や経営の改善に資する土壌、統計、研究成果、市況
等の公的データについて、平成30 年度末までに農業データ連携基盤を通
じて、順次オープンデータ化及び提供。
・集中取組期間(~H32)において研究成果
(データ・論文等)のオープンデータ化を推進
世界最先端 IT 国家創造宣言 ・
官民データ活用推進基本計画
2017/5/30閣議決定
政府の取り組みに一致
・未来投資会議において表明
・ローカルアベノミクス深化
・官民でデータ共有(オープン)
・誰でも自由に使えるものに
「農業データ連携基盤」
農業データオープン化の
必要性と推進を首相が表明
政府の取り組みに一致
フォローできていませんが
土木分野でも同様の動きが
あると思われます
•利用側としてのオープンデータ
•公開側としてのオープンデータ
•国内の現状
人のデータは使うけど
自分のは出さんで~
95%の研究者の態度
何で大切なデータを
公開せないかんの?
保守タイプ
ハイエナタイプ
日本の研究業界における常識?
研究データは
“研究者個人のもの”
貴重なデータは
研究者個人の資産です
オープンデータ界の常識
・データはオープンに共有すべし。
もちろん自分も積極的に使うべし
・利用可能なデータが増え、
車輪の再発明的な無駄が減る
・これまで個人がデータ収集に投じていた
労力を新しいことに費やそう
32
https://openstreetmap.jp/
世界中の生物多様性情報が7億超
オープンデータとして自由に利用可能
GLOBAL BIODIVERSITY INFORMATION
FACILITY (GBIF)
GBIF (http://www.gbif.org/)
JBIF (www.gbif.jp/v2/)
33
https://openstreetmap.jp/
凄まじい勢いで精緻化、高度化
最近、自分の研究でも使い始めました
OpenStreetMap (O.S.M.)
まとめ
・オープンデータは研究者にとって
利用、公開の両方からメリットがある
・ただし、日本の研究コミュニティは
普及もルール整備も遅れている
・積極的なコミュニティは驚くべき
速度で発展している。
大澤剛士(2017)「オープンデータがもつ「データ���放」
の意味を再考する:自由な利用と再利用の担保に向けて」
情報管理 60(1): 11-19.
大澤・岩崎(2016)
「環境科学分野における研究データのオープンデータ化の現状と課題」
環境情報科学 44-4:35-40.
大澤・神保・岩崎(2014)「「オープンデータ」という考え方と、
生物多様性分野への適用に向けた課題」
日本生態学会誌 64(2): 153-162.
大澤 剛士
<arosawa@affrc.go.jp>
オープンデータに関する書き物
6.Osawa et al.(2017)「Specimen records of spiders (Arachnida: Araneae)
by monthly census for 3 years in forest areas of Yakushima Island, Japan」
Biodiversity Data Journal 5: e14789.
5.Fukasawa et al.(2016)「Mammal assemblages recorded by camera
traps inside and outside the evacuation zone of the Fukushima Daiichi
power plant accident」Ecological Research 31(4):493.
4.大澤・和田(2016)「市民参加による広域を対象とした生物調査の可能性-
近畿2府4県における駅のツバメ営巣調査結果およびデータ公開-」
Bird Research R1-R8.
3.Osawa et al.(2015)「Agricultural land use 5- and 10-km mesh datasets
based on governmental statistics for 1970 - 2005」Ecological Research 30(5):757.
2.Voraphab et al.(2015)「Insect species recorded in sugarcane fields of Khon Kaen
Province (Thailand) over three seasons in 2012」Ecological Research 30(3):415.
1.Osawa(2013)「Monitoring records of plant species in the Hakone region of
2.Fuji-Hakone-Izu National Park, Japan, 2001-2010 」Ecological Research 28(4):541.
大澤 剛士
<arosawa@affrc.go.jp>
データ公開論文(データペーパー)

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