第5回生徒が描いた「2011年」に衝撃 教え子尋ね、悔いた元高校教師

有料記事原発事故 教え子に向き合う

笠井哲也
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「正直、単なる思いつきで、深い意図はなかったんです」。2012年1月、福島県立福島西高で地歴科を教えていた小林みゆき(58)は3年生の授業で「2011年を振り返って」という課題を出した。

 西高には県内唯一の美術系の専門学科であるデザイン科学科がある。そこで小林は、課題に絵と文章を入れることを条件とした。2~3時間を割いた後、生徒から返ってきた内容に、小林は衝撃を受ける。

 ある生徒は木炭で「迷子」をテーマに絵を描いた。「2011」という数字が涙を流す絵に、国会議事堂に原子炉格納容器が描かれた国旗を掲げた絵もあった。小林は初めて、生徒が原発事故をどう受け止めたのかに触れた気がした。

 「普段は、ニコニコして、まじめに授業を受けていた子たちだったんです。とにかく、そのギャップにびっくりして……」

 1月以降、生徒たちは大学受験に忙しい。学校には、ほとんど顔を見せなくなった。作品にどんな思いを込めたのか、小林は聞けずじまいだった。

 そこで同年、卒業した教え子を尋ねてまわった。「思いを聞かなきゃ終わらない。とにかく、聞かなきゃって」。そこで出たのは、こんな言葉だった。

 「普通の生活の根っこにある…

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