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クビアカツヤカミキリの
分布拡大予測シミュレーション
2022/5/18 外来生物防除対策フォーラム
東京都立大学
都市環境科学研究科
大澤 剛士<arosawa@tmu.ac.jp>
※うちでも作って欲しいという相談は受けかねます
作成方法は全て公開(OA)されています
日本語の解説
1.現場技術と広域計画という
マルチスケールが必要
⇒車輪の両輪
2.広域計画はしばしば限られた
情報で実施する必要がある
⇒制約の下で最大限の努力を
Take Home Message
スケールの考え方
● 空間スケール:プランター
えいっと駆��
PhotoAC
ダ鳥獣ギ画
1m
10m
オラオラと駆除
スケールの考え方
● 空間スケール:小規模な公園
PhotoAC
ダ鳥獣ギ画
・・・
えーっと。。
● 空間スケール:市町村
スケールの考え方
5km
NPO法人 樹木研究会こうべ
http://jumokukobe.blog.fc2.com/blog-entry-106.html
ダ鳥獣ギ画
個別では手に負えない!
● 空間スケール:県以上
50km
スケールの考え方
埼玉県クビアカウォッチャーズ
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0508/news/page/news20210625.html
ダ鳥獣ギ画
■現地スケール
■広域スケール
● 空間スケールは連続している
スケールの考え方
■現地スケール
● 空間スケールごとで求められる知見が違う
Barnett et al. 2007 Env. Monit. Asses. 132: 235-252
・早期に発見できる手法
・散発する情報を一元化
(地図化)する仕組み
補完関係
(情報を収集するという観点)
■広域スケール
スケールの考え方
■現地スケール
Foxcroft et al. 2009 Div. Dist. 15: 367-378
・注意すべき種の選定(スクリーニング)
・モニタリング、対策の設計
・実際の対策手法
(実際に対策するという観点)
スケールの考え方
● 空間スケールごとで求められる知見が違う
■広域スケール
補完関係
実践には両方の視点が必要
現場の駆除技術
広域の計画
Osawa (2020) Global Environmental Research 23: 21-28.
スケールの考え方
● いずれの視点も重要!
ダ鳥獣ギ画
広域的な分布パタンを分析
重要な場所にピンポイント対策
労力の配分を行うのが望ましい
スケールの考え方
● 効果的な駆除の実践
・特定外来生物
・サクラ、ウメ、モモ等の強害虫
・桜並木、果樹園で壊滅的被害
・近年分布域を広げまくり
(都立大がある八王子市でも確認)
対象種の現状
● クビアカツヤカミキリ Aromia bungii
発生・被害報告は多数・・(埼玉、群馬、栃木、千葉、徳島、大阪ほか
基本的な生態研究に関する総説
(岩田 2018)
ネットを掛けて出てきた成虫を封じ、捕殺する
(中西, 行成, 1992)
幼虫を駆除するために樹木に薬剤注入
(安岡, 2017)
野外で成虫を効率的に捕獲するフェロモン剤の開発
(Xu et al.,2017)
防除マニュアルの発行(森林総研)
対象種の現状
● クビアカに関する知見、研究
薬剤注入
個々の対策はあまり決定打になっていない
→IPM(Integrated Pesticide Management)の必要性
(岩田 2018 )
ネット捕殺
フェロモン剤
対象種の現状
個別技術は蓄積しつつあるが
広域的な管理計画がない!
空間的な計画を立案する上で、生態特性に基づいた
分布拡大シミュレーションは極めて有効
(Ficetola et al. 2007, Fukasawa et al. 2009, Koike and Iwasaki 2011)
しかし、侵入の初期段階では分布データ、
生態特性等の情報が限られる
(Koike 2006, Osawa and Ito 2015, Koike and Morimoto 2018)
こういった状況では、シンプルな設定による
バーチャルエコロジーが有効
(Zurell et al. 2010, Pagel and Schurr 2012)
広域計画の立案に向けて
生態学的プロセスは実測が困難な場合が多い
ダ鳥獣ギ画
典型例:分布拡大
個体レベルの観測(飛翔とか)はできても
個体群レベルでそれを観測するのは困難
バーチャルエコロジー
t-2 t-1 t (現在)
多くの場合、時系列データで推定する
バーチャルエコロジー
No data
t-2 t-1 t (現在)
現実的には穴あきになる場合が多い
バーチャルエコロジー
t-2 t-1 t (現在)
生態特性を利用した理論モデルで
興味あるプロセスをシミュレーション
よし、次はこのシナリオで
、その次はこのシナリオで
・・・
バーチャルエコロジー
不完全なデータでも有効に使える
実際の分布データ
理論的な分布データ
ダ鳥獣ギ画
シミュレーション結果を実データで答え合わせ
バーチャルエコロジー
クビアカのバーチャルエコロジー
● 埼玉県環境科学国際センターの調査データ
市民参加調査+専門家による現地確認
毎年更新され、現状を反映
https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/center/kubiaka.html
クビアカのバーチャルエコロジー
0.7 0.4
0.1
0.1
Osawa et al. (2018) AMBIO 47: 806-815.
● 仮定:餌資源が多い場所に移動しやすい
クビアカのバーチャルエコロジー
● 仮定:サクラの木が多い場所に移動する
1kmメッシュ内の
・河川密度
(河川敷の並木を想定)
・道路密度
(街路樹を想定)
・公園等のサクラ植栽数
(公的機関のみ)
各“サクラの指標”値が高いほど
分布拡大するという仮定
実データ
河川密度
シミュレーション結果
道路密度
シミュレーション結果
植栽数
シミュレーション結果
クビアカのバーチャルエコロジー
● 結果
外来生物の管理には現場技術と広域計画が必要
クビアカについて、広域計画が欠けている
広域計画の立案をしたくても知見が不足
限られた情報を活用するシミュレーション
少なくとも埼玉では河川密度がいい指標
結果のまとめ
1.現場技術と広域計画という
マルチスケールが必要
⇒車輪の両輪
2.広域計画はしばしば限られた
情報で実施する必要がある
⇒制約の下で最大限の努力を
Take Home Message

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