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AI/IoT を活⽤する企業のあり⽅
栄藤 稔
⼤阪⼤学 先導的学際研究機構 教授
株式会社 コトバデザイン 会⻑&CEO
科学技術振興機構(JST) CREST⼈⼯知能領域総括
10/10/2020
1
2
デジタル変⾰の定義 (by 経産省)
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、
データとデジタル技術を活⽤して、
顧客や社会のニーズを基に、
製品やサービス、ビジネスモデルを変⾰するとと
もに、業務そのものや、
組織、プロセス、企業⽂化・⾵⼟を変⾰し、
競争上の優位性を確⽴すること。」
デジタル変⾰には
いくつかのパターンがある。
3
4
NETFLIX
5
トヨタ
https://www.theverge.com/2018/1/8/16863092/toyota-e-palette-self-
driving-car-ev-ces-2018
2050年乗⽤⾞の販売台数は1/5に
6
ANA
植松只裕 ANA HDグループ経営戦略室グローバル事業開発部⻑
https://www.ana.co.jp/group/about-us/strategy/
7
コマツ
https://home.komatsu/jp/press/2019/technology/1202515_1603.html
8
ファーストリティリング
https://www.finance-seisekihyo.com/entry/2018/10/25/090558
9
アリババのニューリテール政策
元アリババCEOであるジャック・マーの「
10年、20年後の未来に、「EC」がなくな
り、代わりに「新しい⼩売」が出てくるだ
ろう。これはオフライン、オンラインと物
流の融合である。」
https://netshop.impress.co.jp/node/5545
ニトリ
10
11
前⽥建設
ps://dev.classmethod.jp/cloud/aws/aws-summit-2019-maeda-corporation-agile/?fbclid=IwAR3dTNaJHLOo6P1Pi2haNMoV3wTAhcROVFtQK9UnrtyyvvVVdTJjRQx5IT
創業100周年
⽬指す未来
AI,IoTロボティクスの⾰新
請負業が限界
総合インフラサービス企業 へ変⾰していく
インフラサービス事業(コンセッション事業)
仙台空港、愛知県の有料道路、愛知県の国際展⽰場
請負をしつつインフラサービスを拡⼤している
IT戦略と組織
⼯事施⼯の⽣産性を⾰新
ITに事業基盤構築
情報システム総合センター
内製開発チーム
ICI総合センター
ベンチャーのアイデアを社会実装するための全てが揃う
MAEDA SII
ベンチャーに資⾦投資
ベンチャーインキュベーション
経営⾯で⽀援
愛知アクセラレートフィールド
12
⽇本交通
https://www.recruit.co.jp/meet_recruit/2018/10/it22.html
Mobility Technologies
13
ワークマンのデジタル変⾰
栄藤 稔
8/23/2019
16
NOBORI
PACS(Picture Archiving and Communication Systems) Personal Health Record
https://www.youtube.com/watch?v=_ulh8x8SDWk&t=21s
⽊村 哲也(旭鉄⼯株式会社,i Smart Technologies 株式会社 代表取締役社⻑)
• ⾒える化から始める.現場を巻き込む.みんなで考える.システムを_
相当_廉価に作る(クラウド利⽤は必然).経営判断の早い中企業と組
む.
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パンデミックにより加速される変化
(ICT化前倒しにより⾒える世界)
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Online Gaming
Online Shopping
Last Mile Delivery
Work From Home(WFH)
Health
Online Training & EducationRobotics
New Media Subscription
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• インターネットサービスへの置換
旧Media → 新メディア,教室->Zoom
• デジタルデバイド解消︓全ての⼈の社会システム参加を可能とするAIインタフェース
• サブスクリプション型サービスの加速︓シェアリング エコノミーの発展系.
• プラットフォーム⾰命 (サイバーX 実空間の統合最適化)
ü アマゾンの⼩売︓ネットで注⽂(サイバー空間)ロボットで梱包・配送
ü Uber Eats︓スマホで注⽂(サイバー空間),⽣鮮⾷品配送(実空間)
• 需要と供給の⾼度なネットワーク形成による社会システムの変⾰
ü 雇⽤のフリーランス化 → Activity Based Working/Distributed Supply Chain
加速されるデジタル変⾰
時間
2年後
Last Mile Delivery
20
WFH
21
USでは60%の⼈間がテレワーク可能,これまでは5­7%だった.
技術的課題は エンドポイントセキュリティ
会社の枠が溶けていく決定的段階に来たか.
新たなデジタルコモンズの登場
短期 中⻑期
22
⽣存者バイアス(せいぞんしゃバイアス、英語: survivorship bias、survival bias)
http://seekingalpha.com/article/3387605-assessing-ges-software-opportunity?page=2
OT
ICT
ICTとOTの結合を狙ったGEの例.
23
24
GE PREDIX頓挫の原因
M.Etoh & A. Arvani /21/2019 in Palo Alto
1. 結果が出る平均時間(5年)を待てなかった.
2. 社内抵抗勢⼒(ICTxOTによる最適化効果がイマイチ)
3. IoTデータ解析システム PREDIXの上に System of
Sytemsが組めるビジネスロジックが形成できなかった.
4. システムがリーンに設計できなかった.(IoTレイヤーと
アプリケーションレイヤーのプラットフォーム分離 )
デジタル変⾰を阻むものは何か︖
• レガシーの壁︓そもそも社内プロセスがデジタル化されていない.
• ⼈材採⽤・育成の壁︓良い⼈材が集まらない、⽣かせない。
• PoC症候群の壁︓検証システムはできるが,ROIまで⾏かない.
• 社内キャズムの壁︓スケールしようとすると⼈材・予算が⾜りない
.外注に頼んで思考停⽌案件が頻発.
• 組織⽂化と⾵⼟の壁︓今、儲かっている現業部⾨はリスクを嫌う.
現場が抵抗する。経営層もデジタルなんて信じていない.
25
SCMの最適化
26https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2006/25/news050.html
National Robotics Engineering Center, CMUの
⾃律⾃動化のケーススタディ (2014)
時給$15x10週間 時給$50x52週間 時給$25x52週間 時給$62x52週間
27
このうちどれが成功したかを計算できるエンジニアは⽇本には皆無.
Time
Fulfillment Progress
Blueprinting(概念設計)
Instrumentation(実装設計)
Pilot & ROI(仮説検証)
Scale(展開)
Machine Data Analysis(データ解析)
System of Systems(システム連結)
IoTにおけるトータルマネージメント
28
壁
レガシーな⼤企業で「収益責任」を負わな
いリーダー不⾜が危機的状況 in Japan
29
How型⼈間 vs Why型⼈間
Time
Size
試⾏錯誤の繰り返し
事業⽴ち上げ
成⻑
安定運営
What-Why の視点が重要
How-When の視点が重要
30
Product Manager vs. Project Manager
プロダクトマネージャーの
視点
Product managers own
"What" and "Why".
ユーザー課題の解決
技術的実現可能性
経済性(ビジネスモデル、
4P整合性)
http://tannomizuki.hatenablog.com/entry/2015/08/15/092259
プロジェクトマネージャーの
視点
Project managers own
"How" and "When".
品質(要件の充⾜と不具合の
少なさ)
開発コスト
リリーススケジュール
31
https://www.jcer.or.jp/policy/policy-proposal/detail5394.html
32
33
儲かってる会社が⾃⼰変⾰できる
可能性はかなり低い。
34
5勝3敗2分0勝0敗10���け
© 2017 NTT DOCOMO, INC. All rights reserved.
conservative
disruptive
time
Spectrum sharing
in time/space
Fate of
Keitai walled garden
2008 2010 2015
Keitai I/O devices
(e.g., UWB)
Context (i.e., location)-Aware Services
Telephony
integration
to Web Application
Content Delivery over
heterogeneous network
Vertically Integrated Service System
with VoIP by Search Engines
L2 Mobility
Optical Switching
Network
Beyond ENUM
(universal ID)
Web 2.0
RoF RAN
Integration
Customer Data
Mining and Yield Management
Another
Thin Client
Unified Optical
Mobile Network
⼈とデータ
Consumer
Network
Keitai
as Ubiquitous Hub
モバイルネットワーク
の構造的変化
端末プラットフォーム
の収斂とI/Oの拡散
Lightweight
computing
XML
chips
Fuel Cell
端末エネルギー
の枯渇
絶え間ないワイヤレス容量の改善
ソフトウェア開発
配布サイクルの
終焉
Collaborative
Innovation
Context Management and sharing
Superior User
Interfaces
AAA for Ubiquitous world
MIMO
Coverage Expansion
Community as wisdom of
crowds
Cellular
Integration of
Heterogeneous
Networks
2006年に6年後を予測してみました。(当時研究所次⻑)
35
たった5⼈で始めたData Mining(2007-)
AWSの⼤量使⽤
メディア理解︓⾃然⾔語処理
オペレーション最適化
検索エンジン
36Slack使い放題
37
社内プロセスに乗せない.
38https://entabe.jp/news/article/2094
密造酒パターン: Pruno or prison wine
AIの果実
組織のIT化
データマ
イニング
プロジェ
クト発⾜
(2007)
挑戦者の
領域
(2012-)
Biz Design -> Architecture Design -> InstrumentationBy Iret
Web-based system
(Shabette-concier, etc.)
クラウドネイ
ティブの領域
(2014-)
社内キャズムの壁
信⽤・信頼の壁
Business system (Personal data analytics, etc.)
Society5.0領域
Security
Governance
Cost management
400~ AWS accounts
Education
Cloud native system design
全社への浸透
5⼈でスタートしたドコモのデジタル変⾰
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インターネット
ペタバイト級のデータ+機械学習+並列分散計算モデル
ビッグデータからの⾏
動パターン分析による
サービス利⽤促進/ユ
ーザビリティ向上
多種多様なログに基づ
くクロスレコメンド/
チューニングによる精
度向上/対象ユーザ・
コンテンツのカバレッ
ジ向上
ビッグデータを⽤いた
辞書構築による⽂字認
識・画像認識精度の向
上/ソーシャルメディ
ア情報活⽤によるユー
ザ動向把握
ビッグデータを⽤いた
ネットワークルーティ
ングの最適化/解約に
つながる⾏動パターン
発⾒
ビッグデータを⽤いた
ハザードマップ/犯罪
発⽣マップの⾼精度化
・カバレッジ向上
交通機関・公共施設の
運⾏最適化による待ち
時間の最⼩化
マーケティング リコメンデーション メディア理解オペレーション最適化 セキュリティ 社会インフラ最適化
業務システム
のデータ
様々な
ログファイル
CRMシステム
の顧客データ
Webサイト,
ブログ
ソーシャル
メディア
静⽌画,動画 センサデータ
Business Intelligence Data-Driven Innovation
ドコモにおけるビッグデータ活⽤(2010-)
40
Web解析
⾔語処理
横須賀のデータマイニング(2010)
41
Client
Redshift
Data Source ET Temporary
Storage
Direct
Connect
State
Management
Forwarder
Loader
Sandbox
VPC
Peering
S3
データ解析基盤
Cloud-based DWH
42
43 43
•ロングテール解析
–ニッチ商品の多品種少量販売に不可⽋
•極低頻度の異様な振舞いの検出
–fraud detection
–Pandemic Analysis
–新語
–プライバシー保護
•データ突合・シーケンス処理
–アンケートXログデータ
–時系列コンテクスト
•個別処理がサービスの本質
personalization
Business Intelligenceの進化編
Business Intelligence →
Data Driven Innovation
会社の⽅針に関係なく,こだわったこと
クラウドの⽣産性 → 内製 → ROIに責任
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挑戦者の
領域
(〜
2015)
問題外
の領域
クラウド導⼊は⼊札で︕
クレジットカードがない請求代⾏お願い,定額ね︕
ITインフラを変動費化したい
プロジェクトベースで
クラウド移⾏
PoC⽌まり症候群の壁
外注丸投げ
思考停⽌症候群の壁
AIの果実
組織のIT化
⽬指す
領域
スタート
アップの
領域
メルカリ(AWS+GCP)
クックパッド
Abeja
SkyDisc(製造現場の
不具合判定 by AWS AI)
壁は無い︕
⽇経デジタル
東急ハンズ
クラウ
ドネイ
ティブ
の領域
フジテック
Biz Design -> Architecture Design -> Instrumentation -> Operation
By Iret, Server Works, etc.
武闘派CIOの存在
とりあえずクラ
ウド移⾏の領域
@システム更改
(2015〜)
近畿⼤学の業務システム基盤
BandaiのIT基盤
クラウドインテグレーター
に丸投げ(これは悪くない︕)
Prototype -> Product
技術⼒の⾶躍が必要
私の阪⼤チーム
イマココ
48
49
• ソフトウェア中⼼︓サービス・製品のUXをソフトウェアが⽀配
しているとの認識.
• System of Systems︓システムを連結して新たな価値を産もう
とする視点,ビジネスと技術を同時に捉えるという視点
• 試⾏錯誤︓失敗のマネージメント.実験を繰り返すという習慣.
• グロースハック︓ 客のUXを計測し,データに基づき逐次改良.
• DevOps: 開発と運⽤を同⼀チームに集約.
ソフトウェア思考
50
51
Tech View
52
Tech+Biz View
タイトルテキスト
•ソフトウェアをアメリカはビジネスにした.
•ソフトウェアをヨーロッパは科学にした.
•ソフトウェアを⽇本は製品にした.
53
富⼠通の宮⽥⼀雄元常務
quality
time/cost
Point of Sales
DepreciationDevelopment
quality
time/cost
Point of Use
DevOps
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Why DevOps?
転職チェックリスト︓
淘汰されるべき企業へのメッセージ
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1. 社⻑⾃らが「イノベーションの源泉がソフトウェアにある」
と理解している.
2. 経営幹部が⾃ら発表資料を作成している.
3. 情報システム部⻑がソフトウェアを書ける.
4. 外部からの中途⼊社の経営幹部がいる.
5. サブスクリプション型のビジネスモデルを実施している.
6. マーケティング,開発,運⽤が⼀体化した組織がある.
7. 企業投資・買収部⾨がある.
Takeaways
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• デジタル≠IT。
• 研究=事業の時代。
• DX期待症候群に注意。
• ⽣存者バイアスに要注意。
• ビジネスと技術開発が同時にできる⼈材が必須。
• 会社の枠を超えた働き⽅が顕在化。
Peter Drucker
「未来は明⽇には作られない。それは今⽇、そして主に今
⽇の任務に関する決定と⾏動によって⾏われている。」
--結果の管理--(邦題︓創造する経営者)
57
“The future is not going to be made tomorrow. It is
being made today and largely by the decisions and
actions taken with respect to the tasks of today.”
--Managing for Results -

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