見て知って、共生の道ひらく 認知症フレンドリー講座

[PR]

 21日は世界アルツハイマーデー。朝日新聞社は認知症についての理解を深め、認知症の人とともに暮らす社会を考える「認知症フレンドリー講座」を展開しています。自治体や企業、学校などから依頼を受けて実施。バーチャルリアリティー(VR)技術を駆使した機器を備えた講師が、研修会場などに出向きます。本社が独自に開発したVRコンテンツには新たな動画ラインアップも加わりました。認知症の人の不安や戸惑いを実感していただけます。

 ■戸惑い・不安、VRで実感

 県民に介護を身近なこととして考えてもらいたいと、福岡県社会福祉協議会は「認知症フレンドリー講座」を毎年採用。年間4回の定期開催をしており、今年で3年目になる。県民は無料で参加できる。

 8月下旬、同県春日市の会場で講座が開かれ、約10人が参加。講座は約2時間。認知症の本人が率直な思いを語るインタビューや専門医の解説動画を視聴したあと、認知症の人の視界を再現した「認知症VR」を視聴した。

 内容は、(1)階段の段差が下りづらくなる状況を再現した「階段を下りる」に加え、新規制作した動画(2)記憶障害や判断力の低下によって路線バスの乗車時に戸惑うポイントを再現した「バスの乗車」(3)目の前に見えているものを他のものに見間違える「錯視」の3部構成。参加者は視聴用のVRヘッドセットを着けて、認知症の人の視界を体験した。

 5年前から高齢者向け介護予防教室の指導員を務める牟田ひろみさん(60)は、「認知症VRを見たかった」と初参加。「『錯視』や『階段』ではゆらゆらする感じがして、認知症の人の視点を体感できました。人それぞれだとわかってはいても驚きでした。『バスの乗車』では、小銭が出せない状況が再現されていましたが、『思わず千円札を出す』という話をよく聞きます。体験することで『そうなんだ』と納得できるところがありました」と話す。事前に知識があれば適切に対応できるとして、「ほかの職員にもぜひ見てほしい」と感想を語った。

 主催の県社協福祉・介護研修センターの加藤伸代さんは開催の狙いについてこう話す。

 「VR体験はもちろん、それに関連付けた講師の解説や、認知症のご本人の思いが聞けて、高齢者の課題を知る第一歩になると思っています。参加者は介護経験がある人も多く、新たな知識を得ることで気持ちがリセットするようです。『今日は家族と夕飯を笑顔で食べられそう』と感想をおっしゃる人もいて手応えを感じています」

 監修を担った筑波大学名誉教授の朝田隆医師は「これは認知症の人の気持ちを『見える化』した高齢社会のわかりやすい教材といえるでしょう。本人の気持ちを察することができれば、人は自然に手を差しのべるし、声がけができる。個人の病気の背景には多様性があるものの、その一端を知ることにつながるのではないか」と話している。

 ■寂聴さんの映画、老いを生きるヒント満載 講座とセットで鑑賞、受け付け開始

 作家で僧侶である瀬戸内寂聴さんが亡くなるまでの17年間を撮影したドキュメンタリー映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」(中村裕監督)の自主上映会を「認知症フレンドリー講座」とのセットの展開で受け付けを開始します。

 寂聴さんは作品内で「老い」や「ぼけ」について率直な思いを語っています。晩年の人生を通じて、「いかに生き、老いていけばいいのか」について考えるヒントが満載の内容です。

 一方、「認知症フレンドリー講座」は認知症の人の思いを知ることで、認知症について理解し、ともに支え合える社会を考えるきっかけを提供するものです。

 この二つを合わせて採用することで、長寿社会における人生後半のあり方をともに考え、たとえ認知症になったとしても穏やかに暮らしていけるヒントをつかんでもらうイベントとして開催できます。

 本イベントは、自治体、企業、有志団体などの申込者が「主催者」となり、会場確保や当日運営を担ってもらうものです。申し込みは開催予定日の2週間前までとなります。開催日時、会場が確定してからお申し込みください。

 ■認知症フレンドリー講座・寂聴さん映画上映会、あなたの��でも

 ◆認知症フレンドリー講座

 自治体、企業、学校などの団体申し込みが対象になります。ご指定の会場に講師を派遣します。受講時間は90~120分程度。ヘッドセットは1人1台使用が前提。感染防止対策をして実施します。

 提供価格は、持ち込むヘッドセットの台数によって異なります。30台までは19万8千円、40台なら22万5500円、50台なら25万3千円など。別途、派遣講師の交通費を申し受けます。

 ◆映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」&「認知症フレンドリー講座」自主上映会プロジェクト

 自治体、企業、学校などの団体申し込みが対象になります。開催するプランによって提供価格は異なります。いずれも参加人数分の映画パンフレットが付きます。

【上映会+認知症フレンドリー講座(オンデマンド配信)セット】自主上映会(1日間)の開催と、認知症フレンドリー講座のオンデマンド配信が期間限定(3日間)で見放題です。提供価格は、50人まで19万8千円、100人まで29万7千円など。上映用メディア(ブルーレイ)を送ります。オンデマンド配信の視聴は専用サイトを開設します。

【上映会+認知症フレンドリー講座(実地開催)セット】自主上映会(1日間)の開催と、認知症フレンドリー講座の実地開催です。上映会と講座は別日の開催も可能です(年度内に限る)。提供価格は、30人まで33万円、40人まで38万円、50人まで42万円など。別途、派遣講師の交通費を申し受けます。

 ◇価格はいずれも税込みです。問い合わせはメール(dementiavr@asahi.comメールする)で。詳細は公式サイト(https://dementiavr.asahi.com別ウインドウで開きます)をご覧ください。

 ◇この特集は坂田一裕が担当しました。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません