「パンドラの箱が……」現場と法にギャップ、艦艇で広がった独自解釈

有料記事

矢島大輔 編集委員・土居貴輝
[PR]

 「一から出直すしかない」。12日、防衛省が発表した自衛隊員218人の大量処分に、省内からは嘆く声があがった。特定秘密保護法の施行から10年、法と現場とのギャップがあらわになった事態に、幹部らは危機感を強める。

 「特定秘密」の取り扱いで違反があった58件のうち海上自衛隊が45件を占め、そのほとんどが艦艇での違法運用だった。そこには、水上艦特有の事情がある。全乗員で65人程度の潜水艦の場合、全員が適性評価を受け、秘密を取り扱う権限を得た上で出港するのと対照的だ。

任務に欠かせぬ「特定秘密」

 特定秘密は、航跡情報や衛星写真などが当たるとされ、艦橋や戦闘指揮所(CIC)などで頻繁に使われる。普段の任務に欠かせない。とはいえ、秘密情報の取り扱いは「知る必要がある者のみに伝え、知る必要のない者には伝えない」という「Need to know」が大原則。空母化される護衛艦いずものように400人を超える大型艦もあり、全乗員に適性評価をクリアさせるのは法の趣旨に合わない。

 一方で、艦艇は限られた人員で24時間運用している。せまい艦内で、適性評価を受けていない人が艦橋やCICに出入りすることも珍しくない。

 ある艦では、評価を受けた人…

この記事は有料記事です。残り1326文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    曽我部真裕
    (京都大学大学院法学研究科教授)
    2024年7月14日8時45分 投稿
    【視点】

    特定秘密の不適切管理の問題や、取引先企業との癒着の問題など今回の一連の不祥事は極めて重大なもので、問題を認め大量処分を行った点はよいにしても、再発防止のために抜本的な取組が求められます。 特定秘密の不適切管理の問題は、つい最近、民間人にも適

    …続きを読む