入所者の心情 思いはせて 長島愛生園で機関誌「愛生」読む会

北村浩貴
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 ハンセン病国立療養所「長島愛生園」(岡山県瀬戸内市)にある「喫茶さざなみハウス」で19日、入所者の文芸作品や園内の様子が書かれた機関誌「愛生」にふれてもらう「愛生を読む会」が開かれる。参加者が自由に冊子を手に取って、その時々の入所者の心情や情景に思いをはせてもらうという企画だ。

 「愛生」は園が発足した翌年、1931年に生まれた。戦時中に廃刊になったが、47年に復刊。点字版が出された時期もあった。入所者が短歌や俳句、散文などの作品を発表する貴重な場で、園での出来事も記されている。

 現在は隔月で発行され、最新号(5・6月号)は通巻849号に。入所者の宮崎かづゑさんや歌手沢知恵さんの連載も掲載されている。

 園内での結婚生活の苦労、医師や看護師充足を求める国への陳情……。数冊分を開くだけでも、入所者の生活や心情を垣間見ることができた。短歌にも思いが描き出されている。

 「つつじ咲く 後楽園に 今日は来つ 無菌となりし 妻伴ひて」(通巻357号、69年)

 「色々に 思へることも 療養の 時間の中に うづもれてゆく」(通巻428号の入所者の遺稿集、76年)

 ハウスには愛生やその点字版など数百冊がある。入所者の遺品として譲り受けたもので、中には半世紀以上前のものも。「読む会」は2021年冬に始まった。コロナ禍で、ハウスは一時休業。その後は岡山市横浜市などに出張して開催していた。

 店主の鑓屋(やりや)翔子さん(35)は「情景が思い浮かんだり、思わぬ発見があったり。親近感がわく部分もあるし、昔の本を読むような気持ちで来てください」と話す。

 今後は月1回、第3金曜日にハウスで開く予定。ワンオーダー制で、営業時間は午前9時~午後4時。問い合わせは、さざなみハウス(080・2923・0871)へ。(北村浩貴)

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この記事を書いた人
北村浩貴
岡山総局
専門・関心分野
地方行政、地方政治、文化財、民俗学、スポーツ