紛争地での国連への攻撃「許されない」 UNRWAトップ、単独会見

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アンマン=高久潤
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 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)トップのフィリップ・ラザリーニ事務局長が、ヨルダンの首都アンマンの同機関の本部で、朝日新聞との単独会見に応じた。イスラエルが、国連機関UNRWAの施設を相次いで攻撃していることについて、「紛争地で人道を守る方法を破壊する行為だ。許されない」と強く批判した。また、米国の資金拠出が停止した現状が続いた場合、8月末以降のガザでの支援活動が難しくなるとした。

 イスラエル軍は6日、パレスチナ自治区ガザ中部ヌセイラトのUNRWAが運営する学校を空爆した。学校は多くの住民の避難場所だったとみられ、ガザ保健省によると、攻撃で16人が死亡し、50人以上が負傷した。7日には、最大都市ガザ市のUNRWAガザ本部がある地域を攻撃した。イスラエル側は、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがUNRWAの施設を軍事施設として利用したり、戦闘員を潜伏させたりしている、と主張している。

 UNRWAによると、7月10日時点で、ガザで職員197人が死亡し、190以上の国連の施設が一部損壊または破壊された。UNRWAの学校や医療施設に逃れていた520人以上の避難民が死亡した。

 ラザリーニ氏は4日の取材に、UNRWAへの攻撃は、ガザのみならず、イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸や東エルサレムにも広がっていると指摘。「前例がないほどの嫌がらせや暴力がUNRWAやその職員に対して向けられている」とした。「それがニューノーマル(新しい常識)になることは、他の紛争地での人道支援にも大きな影響を与える。国連軽視の広がりを加速させる」と危機感を示した。

 さらに、検問所などでUNRWAの職員らに対し「不当な嫌がらせをしたり、拘束して拷問を加えたりしている」とし、UNRWAが運営する学校などが軍に爆破されると、SNSなどでイスラエルの市民らが「称賛の声」をあげることも常態化しつつある、と指摘した。

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この記事を書いた人
高久潤
エルサレム支局長
専門・関心分野
グローバリゼーション、民主主義、文化、芸術
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    錦田愛子
    (慶應義塾大学教授=中東政治、難民研究)
    2024年7月29日12時25分 投稿
    【提案】

    イスラエル軍や民間人によるUNRWAへの暴力が、厳しい批判にさらされることなく常態化しつつある。それが「ニューノーマル(新しい常識)」になり得る、というのは非常に厳しい現実の指摘といえる。学校や病院、人道支援関係者への攻撃は国際人道法違反で

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