「むしろ中国に足元を見られる」日本のフィリピン接近に元高官が警鐘

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聞き手・里見稔
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 中国の海洋進出にさらされる国同士、日本とフィリピンは安全保障面で急接近しています。8日には両国の部隊を行き来しやすくするための「円滑化協定」に署名しました。しかし、防衛省出身で元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「むしろ中国に足元を見られる」と懸念しています。そのわけを聞きました。

 ――南シナ海のアユンギン礁近海では、中国船によるフィリピン船への衝突などが相次いでいます。日米は中国を牽制(けんせい)しようと、フィリピンと連携を深め��います。

 日米は4月の首脳会談や日米比首脳会談、南シナ海での海上協同活動によって、「乱暴な妨害行為は放っておかないぞ」というメッセージを中国に送ったはずでした。

 それが抑止力になると思われていましたが、その後も中国の行為はエスカレートし、6月にはフィリピン軍側にけが人が出る事態に陥りました。

 つまり、日米がフィリピンと一緒になって中国に牽制しても、中国には効いていないということです。

日本とフィリピンの接近について、柳沢さんは「武力紛争に巻き込まれる懸念」を指摘します。そして「日米一体化」のリスクにも警鐘を鳴らしています。記事の後半で紹介します。

 むしろ「妨害行為に対して日…

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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年7月8日17時16分 投稿
    【視点】

     柳沢協二氏は<岸田文雄首相は4月、米国議会で「日本は米国とともにある」と演説し、スタンディングオベーションを受けました。米国は留保を付けない青天井な約束と捉え、当然ながら「何かが起きた場合、日本は一緒に戦ってくれる」と期待するわけです。/

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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年7月8日17時16分 投稿
    【視点】

     コメントの続きです。  この関連で重要なのが、日米首脳会談の3日前(4月7日)に米紙「ワシントンポスト」に掲載された秋葉剛男国家安全保障局長の寄稿です。秋葉氏は、この寄稿で以下の点を強調しました。 <私たちの努力は誤解されるべきではない

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