俳人・夏井いつきさんが語る道後温泉 漱石と子規が歩いた街へ恩返し

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神谷毅
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 俳人の夏井いつきさん(67)は、日本最古といわれる道後温泉近くに居を構える。「道後温泉ファンの俳人を増やしたい」。そこには自分や家族を支えてくれた松山への思いがある。

 道後温泉とは夏井さんにとって、どんな存在ですか?

 「来た、来た、来た! だいたい、こういう質問が来ますよね。あははははっ。温泉大好きな私が『ついに入れなくなった温泉』です」

 「まじめバージョン」としても答えてくれた。「俳句の都・松山の象徴の一つとして、道後温泉は文化的、歴史的な意味合いをもって存在している」

 テレビ番組「プレバト!!」(TBS系)の「毒舌の俳句の先生」で有名になり、それまで通っていた道後温泉は「観光客が多くて、『ちょっとのんびり』とはいかなくなった」。月の半分は松山にいないほど超多忙のスケジュールを送ることも「入れなくなった」理由だ。

松山市道後温泉本館は、2019年から続いていた保存修理工事をほぼ終え、7月11日に約5年半ぶりに全館で営業を再開します。夏井いつきさんは、俳人にとっての道後温泉本館は、アニメ「スラムダンク」に出てくる鎌倉の江ノ島電鉄の踏切みたいなものだといいます。つまり「聖地巡礼」。その心は? 記事後半でインタビュー動画もご覧いただけます。

 愛媛県南部の旧内海村(現愛南町)で生まれ、松山市などで中学教師をしていた。8年で退職し、俳人を志した。

 最初の本を出したころ、1990年代半ばのことだ。俳句の初心者の女性たちを道後温泉本館に連れてきた。

 俳句は高尚で名所旧跡や神社仏閣に足を運んで詠むもの。そう思い込んでいる人が多いと感じていた。「だから絶対こんなところでは俳句を作らないという場所で吟行をしました」

 お湯につかり、10句を作るまで出てはいけないルールにした。

 「俳句を作り始めてすぐの女性たちばかり。みんな湯船の中でフーフー言って真っ赤になって。私はさっと出て浴衣を着て、『誰も来ないなあ』と涼んでいました」

 その後、離婚をして長男と長…

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