元気力 小室賢治さん⑦ 先人に感謝 5年ぶりに奈良県十津川村へ

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隠岐の島町歴史文化交流推進協議会長 小室賢治さん(76)

 中沼了三先生顕彰会の一員として、奈良県十津川村を5年ぶりに訪れた。同村にある県立十津川高校・文武館設立160周年記念事業実行委員会から記念式典の案内が届いたからだ。

 中沼は文化13(1816)年、島根県隠岐の島町中村に生まれた。京都に出て儒学を学び、学習院の講師、孝明天皇や明治天皇の侍講になった。征討大将軍の参謀なども務め、明治維新で活躍。元治元(1864)年には、孝明天皇の命を受け、十津川高校の前身の文武館を設立した。

 こうした縁から、同校は2005年から毎年、修学旅行で隠岐の島町中村を訪れるようになり、顕彰会と交流を続けている。

 十津川村の面積は672・38平方キロメートル。奈良県の約5分の1を占め、北方領土を除けば日本一の広い村だ。しかし、標高1805メートルの仏生ケ岳など険しい山々と深い渓谷で形成され、可住地面積はわずかである。

 前回訪れたときは、2011年9月の紀伊半島大水害での土砂崩れの傷痕が生々しかったが、今回は復興が進み、トンネルなどの道路も整備されていた。

 同校の創立160周年記念式典は今月22日に同校体育館で催され、小山手修造村長をはじめ来賓、在校生、卒業生が出席した。甲斐田剛校長は「本校は1864年、孝明天皇の勅命により設立され、160年の長き歴史を有する。我が校はこれから新しい歴史をつくっていきたい」とあいさつした。記念行事では、作家・竹田恒泰氏の講演や、ユネスコ無形文化遺産「風流踊(ふりゅうおどり)」の一つである「十津川の大踊(おおおどり)」の披露があった。

 翌日に帰島する予定だったが、大アクシデントがあった。飛行機が隠岐上空まで飛んだが、天候不良で視界が悪く、伊丹空港(大阪)まで引き返すことに。JR伯備線も運休になり、松江までの高速バスも満席だった。思案していたら、バス会社の従業員が米子行きの高速バスならチケットがあると教えてくれた。午後9時過ぎに松江に到着し、翌日のフェリーで島に帰ることができた。

 考えてみると中沼先生の時代は何日かかったことだろうか。十津川との素晴らしい絆をつくってくれたことに感謝し、100年も200年も交流が続くようにしなければならないと思った。

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 おむろ・けんじ 島根県隠岐の島町出身、隠岐水産高校卒。20歳で旧西郷町役場に入り、町教育委員会総務課長で退職した。町職員時代、広報紙の担当になり、島の歴史に興味を持った。町文化財保護審議会委員長なども務める。

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