半身不随から復活し理事長の右腕に 退職まで3年残し後進に道譲る

有料記事角界余話

抜井規泰
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 頸髄(けいずい)損傷の重傷を負い、首から下がマヒした尾車親方(元大関琴風、本名・中山浩一)。ある日、入院先の病院のベッドでつぶやいた。

 「カレーライスが食べたいなあ」

 この独り言が耳に入ったのだろう。看護師がこう言った。

 「スプーンを持って、カレーライスを残さず食べた人がいますからね。頑張りましょう」

 俺は、自分でカレーを食うだけで「すごい」と褒められるような体になってしまったのか――。現実を突きつけられ、慄然(りつぜん)とした。

 妻の史枝さんは、手足がかすかに動だけとなった目の前の夫を見つめ、こんな思いがわいた。

 「この人の、この日のために…

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この記事を書いた人
抜井規泰
さいたま総局
専門・関心分野
大相撲、江戸文化、東京防災、荒川防災、東京大空襲、魚河岸