講談×貴重映像で描く横綱・千代の富士 NHK「熱談プレイバック」

宮田裕介
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 レギュラー番組になるか、1回で打ち切りか――。「レギュラー番組への道」(NHK)は、今後の番組の存続をかけているからこその熱量がある。

 今回の新たな企画も、力が入っている。講談師の熱い話芸とNHKの貴重なアーカイブス映像をかけ合わせた「熱談プレイバック」(23日午前0時10分)。皆が憧れたヒーローや世間を感動させた出来事を、新作の講談で描くことがコンセプトだ。

 題材は、ウルフの愛称で親しまれた、小さな大横綱・千代の富士だ。通算1045勝、幕内優勝31回、国民栄誉賞受賞。輝かしい土俵人生の裏には、影もあった。力士生命を脅かす肩の脱臼。まな娘の死。忍び寄る体力の限界。千代の富士は、たび重なる危機を乗り越えた。

 そんな一代記を読み上げるのは、講談師の神田阿久鯉(あぐり)さん。人間国宝・神田松鯉(しょうり)さんゆずりの迫力ある高座が人気の実力派だ。

 阿久鯉さんとNHKエンタープライズの出口明プロデューサーが二人三脚で台本を磨き、どう読むか、2カ月かけて練り上げたという。阿久鯉さんは、スタジオの巨大な壁に映し出された千代の富士の映像をバックに、張扇(はりおうぎ)で釈台を「バシッ」とたたく。心地よい緊張感が走り、話にリズムを作る。

 出口さんは「語りが主人公という、今までにはない新しい番組ができた」と話す。語りやナレーションは、映し出された映像を説明するため、補完的な役割になることが多い。しかし、今回は主役だ。阿久鯉さんのど迫力の語りが存分に楽しめる。

 出口さんは企画に手応えを感じている。「講談になじみのある人もない人も楽しめる新しい演芸番組の型ができた。とにかく見てほしい」(宮田裕介)

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この記事を書いた人
宮田裕介
文化部|メディア担当
専門・関心分野
メディア、放送行政、NHK