「全部恨むと汚れてしまう」元ジャニーズJr.告白までの葛藤と決意

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編集委員・大久保真紀
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 自分に正直に生きていく――。ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年死去)から性暴力を受けていたと、4月12日に実名で会見したミュージシャンのカウアン・オカモトさん(26)が朝日新聞の取材に応じ、被害を受けた当時の思いや、会見をした心の内を語った。

 オカモトさんは、日系ブラジル人4世。ブラジルから働きに来た日本で出会って結婚した両親のもとで、愛知県豊橋市で生まれた。

 団地での暮らしは厳しかったという。幼いころから、日本語が不自由な両親の通訳をしていた。

 オカモトさんによると、12年2月、名古屋のモデル事務所に所属していた中学3年のとき、突然、喜多川氏から携帯に電話があった。ジャスティン・ビーバーの曲を歌うオカモトさんの姿をおさめたDVDを見たという。東京に来るよう言われ、新幹線に飛び乗った。

【アンケート】男の子の性被害について知っていますか

 朝日新聞と朝日新聞デジタルでは3月に「子どもへの性暴力」第8部で、男の子の性被害について取り上げました。男の子が性被害に遭うことは、社会的に十分に認知されているとは言えない状況です。性被害にあった当事者も被害を訴えられない実情があります。みなさんと一緒に考えるためにアンケートを実施しています。回答はこちらにお願いします。

 当日、ジャニーズ事務所に所属するグループの都内のコンサート会場で、喜多川氏と初めて会った。目の前で歌うと、その日の舞台にいきなり上がるように言われ、5千人の観客の前でアカペラで歌った。

1日でスターに その先に待っていたもの

 コンサートの後は、喜多川氏が他のメンバーとともに食事に連れて行ってくれた。そのまま、喜多川氏の豪華な自宅マンションに宿泊した。以降、オカモトさんは、ジャニーズJr.として活動することになる。

 「貧しくて、それまで外食はほぼしたことがなかった。レストランもマンションもすごかった。1日でスターになって、何が現実かわからなくなった。人生が変わるかもしれないと思った」と振り返る。

 仕事に呼ばれて何度か上京し、中学の卒業前に喜多川氏の自宅に泊まった際、性被害を受けた。

 喜多川氏がそばにきて肩をマ…

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この記事を書いた人
大久保真紀
編集委員
専門・関心分野
子ども虐待、性暴力、戦争と平和など
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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2023年5月11日11時0分 投稿
    【視点】

    この問題についてどのような事実が明らかになっても、罪のない所属タレントさんたちの活動とプライバシーは変わらず守られるべきです。それを前提にいうと、いま明確にすべきポイントは亡くなった喜多川氏と被害を受けた方しか知らなかったのか、事実を知って

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    小林恭子
    (在英ジャーナリスト)
    2023年5月12日6時17分 投稿
    【提案】

    勇気を出して語ってくれたオカモトさん。相当、悩まれたことと思います。 年少者だったオカモトさんにジャニー喜多川さんがしたことは、弱い立場にいる人に対する、強い立場にいる人からの強圧的な性的搾取ではないでしょうか。 米国や英国では

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