(社説)兵庫知事告発 解明は議会の責任だ

社説

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 兵庫県の斎藤元彦知事らを告発していた元西播磨県民局長の男性が死亡した。3月、知事らの問題行為について記した文書を一部の県議や報道機関に送っていた。

 文書の内容の真実性をはじめ、解明すべき点は多い。男性が公益通報者保護制度に基づく手続きを県の窓口に行った後、県が男性を停職処分にしたことの是非も、焦点の一つだ。調査特別委員会(百条委員会)を既に設置した兵庫県議会の責任は重い。

 文書は、知事が企業から様々な物品を受け取っている▽職員に怒鳴るパワハラ行為を繰り返してきた、など7項目からなる。知事は、職員とのコミュニケーションについて反省を述べつつ、文書の内容を基本的に否定している。

 百条委は今月中旬に男性の証人尋問を予定していた。今後も県職員へのアンケートや関係者への出席要請など、調査を続ける方針だという。

 文書の内容を見極めるだけでなく、県が男性にとった対応が適切だったかどうかの検証を忘れてはならない。

 県は3月末、男性が文書を出したことを認めたとして、処分の検討に入った。斎藤知事は会見で「業務時間中に、うそ八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格」と厳しく非難し、懲戒処分を行う方針を表明。4月の会見では「当該文書は、県の公益内部通報制度では受理していないので、公益通報には該当しない」と述べた。

 男性はその後、県への公益通報手続きを行ったが、県の人事課は調査を続行。「文書の核心部分が事実ではない」として、5月に他の理由も併せて男性を停職3カ月の処分にした。

 公益通報者保護法は、公益通報を「不正の目的でなく、組織内の通報窓口や権限のある行政機関、報道機関などに通報すること」と定め、通報を理由とする降格など不利益な取り扱いを禁じている。

 男性の行為は当初から公益通報に該当したのではないか。男性が県に手続きをした後も人事課が処分を検討・実施したことに問題はないのか。疑問は尽きない。

 総務省の官僚として大阪府に出向中だった斎藤氏は3年前、兵庫県知事選に立候補。自民の支援が斎藤氏と前副知事とで割れる一方、維新が斎藤氏を推薦し、当選した。

 そうした経緯から「事態は政局になった」と評する声も聞かれる。しかし、県議会として公正に調査を尽くすべきなのは言うまでもない。

 知事とともに県民に直接選ばれた代表として、役割を果たせるかが問われている。

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