「世代継承」か「自己陶酔」か 人生の第7ステージをどう生きる?

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浜田陽太郎
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 50代を過ぎても成長し続ける「知能」がある――。高齢者の心と体を研究する国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の西田裕紀子さんは、こう説明します。周囲から「老害」とみなされないためのコミュニケーションの取り方、人生の後半を心豊かに過ごすための考え方などを57歳の記者が聞いたインタビューの後編です。(聞き手=浜田陽太郎)

自分が「老害」になるのがこわい

――経験や学習によって後天的に獲得できる「結晶性知能」は年を重ねるほどに成熟すると聞き、勇気づけられました。ただ、本人が「結晶性知能」を発揮したと思っていても、周りの若い人には「ウザイ、老害だ」と受け止められそうで、こわいのですが。

 その心配をやわらげるために、ヒントになりそうなのが米国の精神分析家、エリク・エリクソンの「生涯発達論」です。若い人にとっても、中高年という時期を理解し、自分がこの先進む道を展望するために役に立つかもしれません。

 アイデンティティーという概念を広めたことで知られるエリクソンは、人生を、乳児期から高齢期まで八つの発達段階にわけました。そして、それぞれの時期には特有の心理的葛藤があり、人はそれを克服していくなかで人間的な強さを獲得すると考えたのです。

――中高年は、人生のどの段階にいるのでしょうか。

年齢を重ねるほど成熟する「結晶性知能」って? 村上春樹さんが体現

インタビューの前編では、年齢とともに衰えていく知能と、年齢を重ねるごとに成熟する知能について、作家の村上春樹さんの活動を例に西田先生が解き明かしています

 八つのうち、7番目の「成人期」(40~65歳ごろ)。このステージのキーワードはジェネラティビティ(世代継承性)です。子どもを育てたり、後進を導いたり、創造的な仕事をしたりすることで「次の世代に関心を向け、社会に貢献することで高まっていく成熟性」と説明されます。

 ジェネラティビティの発達に…

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    BossB
    (天文物理学者・信州大准教授)
    2024年7月7日14時0分 投稿
    【視点】

    自分は、まだまだ人生半分生きただけだし、と思っていたのに、人生八つのステージのうち、もう7番目にいるらしい。目的はあるし、やりたいこともいっぱいあるし、自分には無限の可能性があると信じている。しかし、体力がついてこない、寝られないからすっき

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2024年7月7日14時0分 投稿
    【視点】

    成人期も終わりに近づいている私にとって、どれも人ごとではない、そして耳の痛い話ばかりだ。怖いのは、歳をとると判断力が鈍るので、自分では大丈夫と思っていても、はたから見るとただの独りよがりになっていることだ。これは自分では見極めがつかないので

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