シャブ、当たり屋で稼いだ自分にさらば 組員がカタギに転生するまで

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小川聡仁 小田健司
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 湯煙が立ち上る、西日本の観光地の一角。

 「ありがとうございました」

 旅館の玄関前で、チェックアウトする宿泊客へ深くお辞儀する男性(40代)の姿があった。

 頭を70度ほど傾ける、接客の所作も染みこんできた。この仕事に就いて5、6年。それまでは、暴力団組員だった。

 その半生と、暴力団の実態を取材に語った。

     ◇

紳士服店の駐車場やパチンコ店内に…

 物心ついた時から、暴力団は身近な存在だった。父をはじめ複数の親族は暴力団組員。地元で主に覚醒剤を売っていた。

 男性は高校を1年経たずに中退。高利貸しや詐欺で稼ぎ、面倒な取り立ては父の暴力団に依頼した。

 肩や背中に入れ墨を彫り、稼ぎは競輪や賭けマージャンへ。「今でいう半グレみたいな存在でした」

 ただ地元の人間関係に疲れ、「普通の生活」に心が動いた。2010年ごろから6年ほど、東海や近畿で電気製品を作る工場に勤務した。

 転機は16年に訪れる。

 以前一緒に悪事を企てた知人が出所し、男性がチンコロ(密告)したせいで捕まったと話している、と人づてに聞いた。

 否定しようと思い電話すると…

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この記事を書いた人
小川聡仁
ネットワーク報道本部

人口減少、法律、経済、震災、商品

小田健司
神戸総局|事件・調査報道担当

権力監視、原発、公共事業、ボブ・ディラン