第5回「毒親」と呼ばれた母の後悔 中学受験の「成功」が後押しした過干渉

有料記事中学受験と教育虐待

高浜行人
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 兵庫県の50代女性は、現在20代の長女が言葉を覚え始める頃から、毎晩欠かさず絵本の読み聞かせをした。

 幼稚園の頃は幼児教室、小学校3年生からはプリント学習の塾に通わせた。

 その後、中学受験に向けて有名進学塾に入れた。小学校高学年になると、ほぼ毎日、塾と自宅の���を3往復した。長女を塾に送っていったん帰宅し、弁当を作って届け、さらに迎えにも行った。弁当は栄養バランスに気を配り、手は一切抜かなかった。

 進学先を検討するため、中学が開く説明会にもできる限り出席した。塾が作る偏差値表の上位にある中学は全て訪問した。受験情報などが聞ける塾の講演会などはもれなく参加した。

 中学受験で偏差値の高い学校に合格させたい。その一心だった。

 必死だった分、長女には厳しく当たった。

 模試の成績が下がると「なんで下がったの」「ちゃんと勉強してるの」などと詰問した。長女は「ごめんなさい」と言い、涙を流した。ミスをしたことが頭にきて、手を上げることもあった。

 ゲームはさせず、漫画も読ませなかった。友達と遊ばせることはほとんどなく、折り紙などもさせたことがなかった。

 周囲には、同様に受験一辺倒の家庭ばかり。自分の長女への接し方がおかしいとは思わなかった。一方で、重圧からか、模試の成績をごまかして親に伝えた子の話も聞いた。

 長女は受験を嫌がるそぶりは見せなかった。関西でトップレベルの私立中高一貫校に合格し、進学した。

中学受験で志望校に合格した長女は、その後も熱心に勉強しました。大学受験期、ある出来事をきっかけに親子関係は激変します。

妊娠と同時に退職 「子どもに全てを注ぐ」

 女性が中学受験にこだわった…

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この記事を書いた人
高浜行人
東京社会部|教育班キャップ
専門・関心分野
学校教育、受験、教育行政
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    島沢優子
    (ジャーナリスト・チームコンサルタント)
    2024年7月5日23時26分 投稿
    【視点】

    お弁当に添えられた、メニュー書きのメモに目を奪われました。そこに強烈な自己承認欲求を感じました。お母さん自身の中に満たされない何かがあったのではと思わせられました。 子どもは本当にやさしい生き物です。自分から連絡をとってくれるそうです。よ

    …続きを読む