地域と深くつながり、キャンパスから課題解決を目指す――都留文科大学の地域創生の取り組み

Sponsored by 都留文科大学

2024/07/05

山梨県都留市にある都留文科大学。「ツルブン」の愛称で親しまれる同大では、山々の稜線に抱かれた自然豊かな環境で、国内外の各地から集まった学生がのびのびと学んでいる。都留市の人口は3万人ほどだが、「ツルブン」の学生は3000人を超え、同市や近隣の市町村にとって、なくてはならない存在だ。同大では、地域とともに歩む大学として地域創生に力を入れ、キャンパスからイノベーションを起こすための取り組みを実施。その詳細を、教員と学生の視点から紹介しよう(写真は、大学と社会をつなぐ教育研究拠点「Tsuru Humanities Center=THMC」でVRを体験する子どもとサポートする学生)。

◆自治体や企業と連携し、学生が自ら動く課題解決型のプロジェクト

公立大学法人として、地域に根差す都留文科大学は、地域創生についての取り組みに注力し、周辺地域とともに歩んできた。

「都会では大人の働く姿が見えにくい。その点、地方で暮らせば、大人の背中を間近で見られる。学生が地域社会に関わることの大きな意義はそこにあると私は考えています」

そう語るのは、教養学部地域社会学科の鈴木健大教授だ。地域交流研究センター長も務める鈴木教授は、地方自治体経営や地方創生ソーシャルイノベーションについての授業を担当している。

鈴木健大(すずき・たけひろ)/教養学部地域社会学科教授。博士(メディアデザイン学)。神奈川県住宅供給公社、川崎市役所、横須賀市都市政策研究所、香川大学地域連携戦略室特命准教授などを経て、2018年都留文科大学教養学部地域社会学科准教授、2023年から現職

「私の研究室の研究開発では、PBL(Project/Problem Based Learning・課題解決型学習)の手法を採用しており、学生が地域と一緒に地域社会の課題を発見・共有し、その解決策をともに考え、実践活動につなげることを目指しています。自治体や企業と協働し、課題解決のための政策やビジネスの種を生み出す研究を行うことを使命としていますが、それを生み出す過程そのものが、学生はもとより、市民のみなさんを含めた学びの場になっているのです」

たとえば、地元の都留市や富士急行と連携した沿線の地域活性化プロジェクトでは、学生たちが都留市内のサイクリングコースマップを作成したほか、地元ならではの食の素晴らしさを体験できる「都留のおいしいをめぐるツアー」などを実施。また、山梨県道志村や上野原市秋山地区との連携では、各地域が抱える人口減少の課題解決に向けての施策を実行してきた。

「道志村、上野原市秋山地区ともに、かつては林業で栄えていましたが、今は人口が1500人程度と過疎化が進んでいます。学生たちは役場の方々に現状を学び、自分たちの足で地域を歩き回って、課題解決策を考えてきました。たとえば秋山地区では、特産品である東京長カブの生産者が年々少なくなっていることを知り、カブをアピールして新たな特産品につなげるため、自分たちで東京長カブを育て、ジェラートにして販売しました」

JR東日本とも連携し、2023年度には秋山地区におけるマイクロツーリズムを実施。24年秋には、JR大月駅を起点にインバウンドをターゲットにしたマイクロツーリズムも予定している。

写真は、左上:上野原市、JR東日本、株式会社さとゆめとの連携による秋山地区ツアーでの収穫体験、右上:同じく秋山地区ツアーで景色を楽しむ参加者、右中:富士急行線谷村町駅舎を活用した放課後の子どもたちの居場所づくりプロジェクト「ぷらっとはうす」、右下:都留市・富士急行との連携による「都留のおいしいを巡るツアー」、左下:都留市・富士急行との連携により作成したサイクリングコースマップ

「2年生次にプレゼミが始まり、地元のお祭りや田植えに参加するなど、地域の暮らしぶりを体感して地域学習を重ね、その後、3年生のゼミから卒業まで実践を繰り返していきます」

ゼミで学生が考案したプロジェクトは、企業や自治体の担当者に向けてプレゼンテーションを行うが、プレゼンのための指導も鈴木教授が丁寧に行い、施策をブラッシュアップする。さらに、年度の終わりに行政の長や担当者などを迎えてプロジェクトの振り返りを行い、次年度の活動に生かしている。社会に出る前から大人たちとともにビジネスの基本であるPDCAを体験できるわけだ。現在も、富士急行の無人駅の駅舎を利用した子どもたちの放課後の居場所づくりなど、多様なプロジェクトが進行している。

「まちおこしといっても、例えば従来のような“見て回るだけの観光”ではなく、次世代を支える産業につなげていくための、時代の要請に合わせたアイディアが重要です。最近では、山梨県内外でビジネスを展開する大企業からのお声がけも増えており、新たな連携が生まれつつあります。『地域を元気にしたい』という切実な思いに、産官学の垣根はないはず。だからこそ、地域に関心を向け、仕事の創出や、よりよい暮らしを考えられる人材を育成していきたいと考えています」

鈴木ゼミの卒業生はさまざまな進路で活躍中だ。半数を占めるのが公務員で、山梨に残ったり、出身地に戻って就職するケースが多いが、縁もゆかりもない自治体の公務員とな���て、地域活性化に尽力している学生もいるそうだ。また、民間であれば地元のテレビ局や新聞社などを選ぶ学生も多いという。

「地方の人口が減れば、ゆくゆくは東京の人口も減ります。農業の担い手が減れば、食糧難にも陥る。地域の課題は日本全体の問題であり、その課題を解決する人材は、今後いっそう求められていくことでしょう。学生たちには卒業後、どのような進路を歩むにしても、古いやり方にこだわらず、自らの考えに基づいて社会や仕事のありかたを変化させていってほしいと願っています」

◆鈴木ゼミで学ぶ学生に話を聞きました~教養学部 地域社会学科4年 河野夏羽さん(宮崎県出身)

「ゼミで得た経験を生かし、経営コンサルタントとして国内企業の課題解決に貢献することでイノベーションを促進し、日本経済全体の底上げに尽力したい」という河野さん

高校時代に、学校と市が連携した地域の課題解決のためのPBLを経験し、大人とかかわることの楽しさや地域に貢献できる喜びを知り、大学でも地域にかかわる学びを深めたいと考えるようになりました。そのなかで都留文科大学の鈴木先生のゼミを知り、活動評価型推薦(現・総合型選抜)で受験。鈴木ゼミに入りたくて「ツルブン」を選んだといっても過言ではありません。

ゼミでは上野原市秋山地区をメインに活動し、東京長カブを利用したレシピ開発のほか、秋山の暮らしをより良くしようと活動している住民のみなさんを紹介する冊子『秋山とりこ図鑑』の作成・発行も行いました。また、カメラが趣味の20~30代の女性をターゲットにしたツアーでは、地元野菜の収穫体験や秋山で採れた食材を生かしたお母さんたちの手料理、高台から棚田の絶景など秋山の暮らしなど、「日常」をカメラで切り撮っていただき、SNSで発信してもらいました。参加者のみなさんからは「本格的にビジネス化を検討したい」「また別の季節に来て、秋山のいろいろな顔を見てみたい」との声をいただきました。私たちが初めて秋山に来たときの感動、そして秋山に通いつづけてきたからこそ見つけてきた魅力や潜在価値を、地域外のみなさんに提供できたことが本ツアーの意義であったように思います。

PBLの魅力とは、自分のアイデアを具現化できること、他者への貢献を実感できることにあると思います。自分たちのアイデアが次々と形になっていく過程は、とてもワクワクします。しかし、アイデアを形にするというのは、決して容易なことではありません。プロジェクトの内容や進め方については、鈴木先生から厳しいチェックが入ります。高校時代のPBLは甘かったと痛感するほど、鈴木ゼミでのPBLはハードでしたが、その分、実現したときの達成感や地域の人たちからの感謝の声が自身の原動力になりました。

鈴木ゼミの活動では、企業や自治体の方々など、多くの大人たちと接します。言葉遣いやマナーはもちろんですが、コミュニケーション面での行き違いがないように細やかに協議しながら進めることの大切さを感じました。またチーム内での情報共有の図り方、プレゼンテーション力の向上、目的に向けた優先順位のつけ方など、ゼミを通じて得たものは数えきれません。

卒業後は、経営コンサルティング会社への就職が決まっています。ゼミで得た経験や知識を生かし、企業が直面する課題を解決することで日本のイノベーションが起きにくい環境を変革し、日本経済全体の底上げに尽力したいと考えています。

◆最新のIT機器を備えた施設を、地域の情報活用実践の拠点に

2023年4月、大学と社会をつなぐ教育研究拠点として「Tsuru Humanities Center(THMC)」がオープンした。21世紀を担う人材の育成を見据えて新たな教育の研究を行うこと、そして地域とともに大学の価値を創造することを目標としている。

教職支援センターの吉岡卓准教授は、「THMCのコンセプトは“集う、学ぶ、深める”です。学生だけでなく、地域に根差す公立大学として、地域のみなさんが集い、学びを深める拠点にしたいという思いが込められています」と語る。

「THMCを、地域のみなさんと学生の交流を通してイノベーションが起きる場にしたい」と語る吉岡准教授

THMCで特に注力しているのが、ICT機器の活用に長けた人材の育成だ。吉岡准教授は情報科学が専門だが、文系大学である本学がICT教育に力を入れるのはなぜだろうか。

「卒業後の進路を見据えてITを学びたいと希望する学生へのバックアップという面はもちろんありますが、それだけではありません。少子高齢化の時代において地域が抱える課題を解決するには、情報技術は必須であり、地域全体の情報活用能力を上げていく必要がある。そのため、THMCを地域の情報活用実践の拠点にしたいと考えました」

THMCは、曜日・時間限定で一般市民に無料開放しており、プログラミング教室など市民向けの公開講座も実施している。また、最新のIT機器を備えたデジタルコモンズではVR体験や、3Dプリンターを使った造形にもチャレンジできる。GIGAスクール構想によって、小中学校でもタブレットを使った授業が行われているが、VRや3Dプリンターは学校で体験する機会がほとんどない。そのため、最新のIT機器に触れたいという好奇心旺盛な子どもたちが熱心に足を運んでいるという。

「本学の学生がICT指導員として使い方を教えているので、IT機器になじみがない人でも楽しむことができます。このような施設は日本中を探してもあまりないのではないでしょうか」

もちろん、本学の学生にも盛んに利用されており、CAD(コンピューターによる設計支援ツール)による3Dデータの作成など、さまざまなスキルを身につける学生もいる。

ちなみにTHMCは、教員を目指す学生をバックアップする施設でもある。
「GIGAスクール時代の到来により、教員として教壇に立ったときにタブレットを活用した授業を行い、IT機器の操作方法を児童・生徒に教える必要があります。そのため、THMCではGIGAスクール時代に応じた教育の研究を行っています。たとえば施設内に実際の小中学校をイメージした模擬教室を設け、タブレットやパソコンと連動させて使う電子黒板(デジタルボード)を設置。教員志望の学生に向け、タブレットを活用しながら授業を進める練習も行っています」

本学では、今年度から副専攻プログラムをスタート。これにより、専門領域だけでなく学部学科の枠を超えて関心のある分野を学べるようになった。副専攻プログラムには、デジタルシティズンシッププログラムもあり、文系大学でありながらデータサイエンスの技術や応用などについて知識を深めることを可能としている。

「今後は、IT企業を志望する学生へのバックアップを行うとともに、本格的な動画編集やAIの活用など、より幅広い経験を積める場として展開していく予定です。THMCを地域の人びとが気軽に立ち寄ってもらえる施設として、学生との交流を通してイノベーションが起きる場にしたい。この先、企業との連携も視野に入れ、有機的なつながりをどんどん生み出していきたいと考えています」

◆ICT指導員を担当している学生に話を聞きました~文学部 比較文化学科4年 宮腰真優さん(秋田県出身)

「文系でありながらICTに深く接することができるのは本学ならではの魅力」と宮腰さん

高校時代から美術に関心があり、比較文化学科で美術と社会の関係性を学んでいます。大学のある場所は娯楽が少ないので、楽しく過ごす方法の一つとしてプログラミングに関心を持ち、吉岡先生の授業を受講。そこでIT資格の参考書やVR機器に触れ、ICTに興味を持つようになりました。先生からICT指導員のアルバイト募集について聞いたときは、「ぜひやりたい」と即決でした。

ICT指導員の仕事は、大きくわけて二つあります。一つは、大学内で学生に向けてWord、Excel、PowerPointの使い方を教えたり、Wi-Fi接続などのお手伝いをすること。これは、まだパソコンの使い方に慣れていない1~2年生が対象です。もう一つが、THMCでVRやレーザーカッター、3Dプリンターの使い方を教えたり、プログラミング講座などのお手伝いをすること。THMCは地域に開放しており、子どもたちやその親御さん、ご高齢の方までさまざまな人が訪れています。

特に小学生は「IT機器に触れるのは初めて」という子が多いので、反応がとても楽しいですね。子どもたちは最初のきっかけとなる操作さえ教えれば、あとは直感的に操作し、あっという間に吸収するので驚きました。

VRでは、外国の風景や、ジェットコースターの席から見た景色に没入したような体験ができるのですが、「海外旅行にいったような気分になれてリフレッシュできる」と言ってくださる年配の方もいて、IT機器の可能性を感じました。もちろん、学生も自由に活用できるので、3D プリンターやレーザーカッターを利用してオリジナルの作品を作っている人もいます。私も触発されて、3Dプリンターでパズルを作ったりしました。

卒業後はIT系企業でシステムをつくる仕事に就くことになりました。この進路は入学時にはまったく予想しておらず、ICT指導員を経験したからこそだと感じています。高校、大学ともに文系の勉強が中心でしたが、文系でありながらICTに深く接することができるのは本学ならではの魅力。8月に開催されるオープンキャンパスでは、指導員としてみなさんのサポート役を務める予定です。ぜひ多くの人にTHMCの楽しさを味わっていただきたいです。

◆オープンキャンパスで「ツルブン」を体感しよう!

都留文科大学の夏季オープンキャンパスは、毎年、全国から3000人近くが集まる大きなイベントで、今年は8月3、4日に開催される。THMCでのVR体験会などの催し物のほか、学科別説明会、特別講義も開催。また保護者向けの説明会では、卒業後の進路やキャリアサポート、ひとり暮らしに関する情報提供も予定されており、同大の細やかなバックアップ体制を知ることができる。オープンキャンパスに足を運び、「ツルブン」の魅力に触れてみよう!

<詳しくはこちらへ>

都留文科大学の地域連携
https://www.tsuru.ac.jp/site/tiikirennkei/

Tsuru Humanities Center(THMC)
https://www.tsuru.ac.jp/site/thmc/

夏季オープンキャンパス2024
https://www.tsuru.ac.jp/site/opencampus/

取材・文/音部美穂 撮影/大野洋介 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ

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