■特集:オープンキャンパスに行こう!
相次ぐ共学化などにより、女子大学の数は1998年の98校をピークに徐々に減り続け、2023年には73校まで減少しています。生き残りをかけて様々な努力を続けていますが、女子大学だからこその良さに注目する人もいます。女子大学のオープンキャンパスに訪れた、受験生の父親の声を聞きました。(写真=津田塾大学のオープンキャンパスの様子、編集部撮影)
父娘での参加は約1割
24年3月、津田塾大学で春期オープンキャンパスが実施されました。JR中央・総武線の駅前という立地が魅力の千駄ケ谷キャンパス(東京都渋谷区)には、総合政策学部が設置されています。当日は大学説明や学生によるキャンパスツアー、学生や職員による個別相談などが開催され、事前予約をした多くの親子連れが訪れました。
そのうち、父と娘で来場していたのは約1割でした。父親は、女子大学にどんな印象を持ち、どんなことに期待しているのでしょうか。
働く人生をイメージできる
「女子大学はキャリア教育が充実していると感じる」と言うのは、神奈川県立高校に通う次女(高2)と妻と一緒に参加したAさん(59)です。オープンキャンパスを訪れるのは、共学校も含めてこれで4~5校目だといいます。
「一般的に見ると、女子大学は人気が下がっているのかもしれませんが、キャリア教育に力を入れる大学が多い印象です。ライフイベントと仕事との両立についても早くから考えさせるため、仕事をしながら人生を送るイメージを早い段階で描けるのもメリットではないでしょうか」
Aさんが女子大学に注目したのは、大学生の長女が、付属高校から女子大学に内部進学したことがきっかけです。
「共学校だと、リーダー役や発言を男子に譲ってしまうこともあるでしょう。でも、女子しかいない場では、人任せにせず、自分で考えて発言したり行動したりする機会が多いように思います。長女も『気兼ねなく発言や行動できて生活しやすい』と話していて、活発になりました。女子が多いぶん、気の合う友人もつくりやすいようです」
ただし、女子だけということで逆に気になるのは安全面といいます。「津田塾大学千駄ケ谷キャンパスのように駅からアクセスが良いことや、ICカードを使って入退館するセキュリティゲートが備わっていることは、安心感につながります」と話していました。
「女子同士のつながり」に期待
「在学生と卒業生とのつながりの強さが魅力的だと思っています」と言うのは、県立高校に通う次女(高2)とともに参加したBさん(45)です。自身が地方出身であることから、都会の私立女子大学の雰囲気を知りたいと思い、父子で参加したのだといいます。
「在学生も卒業生も、母校愛が強い印象を受けました。その思いが一致するからこそ、卒業生によるキャリア支援が充実したりもするのでしょうが、そここそ伝統のある女子大学ならではの良さだと思います」
父娘で外出する機会も多いというCさん(59)は、職場で多くの部下と接するなかで、「長く働き続けているのは女子大学出身者が多いのでは」と感じているそうです。共学の大学に進学した長女が就職活動で苦戦した姿を見ていたことも相まって、都立高校に通う次女(高1)には、女子大学に進学してほしいと考えています。
「これからは、ますます女性が活躍する社会となるでしょう。女子同士の強いネットワークを通じて、卒業後も長く支え合う関係を築けるのが女子大学の魅力なのかなと思います。娘にはぜひ、自分の興味に合わせた専門知識とスキルを深められるところを見つけて進学してほしい」と言います。今後も女子大学を中心にオープンキャンパスを回る予定だといいます。
神奈川県から訪れたDさん(50)も、「女子大学は就職に強い」と見ています。娘(高1)は私立の女子中高一貫校に通っています。
「大学選びの際は、就職率や就職先を重視したいと思っています。女性には出産や子育てなどがあって、紋切り型のキャリア教育では太刀打ちできません。女子大学には女子大学ならではの人脈があって、卒業生から実務経験に基づいたリアルなアドバイスがもらえたり、学生それぞれに合ったサポートをしてもらえたりするのも強みだと思います」
社会で活躍する卒業生からのサポート
女性ならではのキャリア教育や就職に着目する声が目立ちましたが、大学側はどう見ているのでしょうか。津田塾大学経営企画課の五十嵐俊也課長は、次のように話します。
「皆さんがおっしゃっている通り、男性の目を意識せずに、自分らしく過ごせるところが女子大学の魅力の一つです。今回のオープンキャンパスでも、重たいスピーカーを女子学生スタッフみんなで一生懸命に運んだり、だれかしらが積極的にリーダーシップを取っていたりする姿を見て、たくましいなと感心していたところでした。津田塾大学の卒業生には、DeNAの創業者で会長を務める南場智子さんをはじめ、社会で活躍する方がたくさんいます。そうした社会で活躍する卒業生が、学生のキャリアをサポートする取り組みに大学として力を入れていますし、これからもその強みを生かしていきたいと思います。女子大学ならではの良さをぜひ見ていただきたいです」
女性ならではの教育を提供し、女性の社会進出を積極的に支援する女子大学で得られる学びやメリットを、男性社会で生きてきた父親だからこそ感じる部分もあるのかもしれません。
※学年や年齢は取材時のものです。
(文=黒澤真紀)
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