会いたい、会わせたい 東日本大震災10年

東日本大震災から10年。行方不明者はなお2500人を超え、今も家族を捜す人たちがいる。遺体の身元捜査を続ける警察、身元が分かっているのに引き取り手がない遺骨……。「会いたい」「会わせたい」。人々の思いが交錯する。

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  • サッカーボール/学校のサッカー部だった生徒らが顧問に贈ったとみられる。「先生との思い出は一生忘れません」などのメッセージが書かれている
  • カメラ/長時間、水に浸ったからなのか、さびや腐食が進んでいる
  • めがね/子ども用とみられ、ケース内側に所有者の名前がひらがなで書かれている
  • 黒いランドセル/留め具やふたの開閉部分の金属がさび付いている
  • 母子健康手帳/交付欄には「昭和53年4月1日」と書かれている
  • ラグビーボール/結婚したラグビー仲間に贈った寄せ書きとみられ、心温まるメッセージが多数記載されている
  • はっぴ/子ども用で、祭りの際に着ていたとみられる
  • スケッチブック/風景画や人物画が描かれている
  • ビデオカメラ/金属部分の腐食が激しい
  • 硬式野球ボール/「一球入魂 夢に向かって爆進せよ」とメッセージが書かれている
  • 万年筆/クリップ部分がさび付いているほか、本体も多数の傷がついている
  • ビデオテープ/ケースには「保育所の餅つき風景」と書かれている
  • メダル/「第3位 第5回自治労連全国スポーツ大会バレーボール大会」などと書かれている
  • 水着/子ども用で、繊維の間に砂が入り込んでいる
  • メガホン/高校野球の応援用だろうか、表面に人の名前が多数書いてある
  • 紅白帽/小学生が体育などで使っていたとみられる
  • 赤いランドセル/背面に反射シールがはられ、ふたを開けると、水に浸った跡がある
  • 位牌/戒名が書かれた部分は腐食し、なくなっていた
  • 指輪/側面に「I LOVE YOU JUST AS YOU ARE」と彫られている
  • 腕時計/金属部分が変色し、文字盤も腐食している
  • DVD/震災の前年にあった結婚式の写真か動画が入っているとみられる
  • ベース/昨秋、震災遺構として保存が決まっている旧気仙中の校舎で見つかった
  • ジャージ/中学生のものとみられる。ところどころ変色している
  • テニスラケット/グリップの一部ははがれているが、ガットはピンとはっている
  • 野球グローブ/全体的に色あせている
  • 携帯電話/ドコモの折りたたみ式で、金属部分はさび付いていた
  • 獅子舞の用具/沿岸部では大漁や海上の安全を願う獅子舞や虎舞が盛んだったという
  • 専門学校の成績表/昭和時代に在籍していたとみられる
  • スケッチブック/人物画や風景画が描かれている。水に濡れてゆがんでいる
  • 全国高校野球大会のペナント/「夏の甲子園」(1988年)の記念ペナント。被災地の高校の名前もある
  • 野球のユニフォーム/IWATEとチーム名が入っている。背番号は3
  • 七福神の木彫り/沿岸部では漁師が多く、航行の安全や大漁を願う木彫り像が多数見つかった

まだ、たったの10年 もう一度抱きしめたい

海岸で見つかった青色のジャージー。「熊町小 1年2組 きむらゆうな」と書かれている

木村紀夫さん(55)はいまも、かつて自宅があった福島県大熊町に、移り住んだ先から通い続けている。津波で亡くなった当時7歳の次女、汐凪(ゆうな)さんの遺骨を捜すためだ。もう会えないことは、頭ではわかっている。でも、どうしても会いたい。もう一度、この胸に抱きしめてあげたい――。「もう10年と人は言うけれど、私にとっては、まだ、たったの10年なのですから」

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木村さんは当時7歳の娘・汐凪(ゆう・な)さんの手がかりを探し続ける

名前をかえすことで、人生が浮かび上がる

宮城県警捜査1課の身元不明・行方不明者捜査班は、これまでに約560体の遺体の身元を特定した。班長の菅原信一さんは、身元特定の作業を「遺骨に名前をかえすこと」と言う。地図分析など独自の手法を駆使して、骨に刻まれたその人の人生を浮かびあがらせてきた。現在、身元不明は6体。捜査班は地道な作業を続けている。胸にあるのは「家族にかえしてあげたいという思い」だ。

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宮城県警の警察官は行方不明者の捜索に当たっている

5人の骨、今も寺に 「遺族の引き取り待ちます」

宮城県多賀城市の宝国寺。本尊のそばに、東日本大震災で亡くなった男女5人の骨箱がある。市に頼まれ、寺が保管しているが、身元判明後も遺族に引き取られていない。加藤秀幸住職は「引き取らない事情は複雑」と遺族側にも理解を示したうえで、時がたてば心境も変わるかもしれないと期待する。「もう少し、もう少し、と引き取りを待つうちに10年。でも、もう少し待ちます」

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加藤秀幸住職は身元が判明しながら引き取り手が現れない震災の遺骨(上段)を示した

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「会いたい、会わせたい 東日本大震災10年」

公開 2021/3/11

編集・ディレクション
関根和弘
取材
南相馬支局・三浦英之(木村紀夫さん) 仙台総局・川野由起(宮城県警) 立川支局・山浦正敬(宝国寺)
ウェブ制作・デザイン
朝日新聞メディアプロダクション(佐久間盛大、原有希)
撮影協力
「陸前高田市 思い出の品」(三陸アーカイブ減災センター運営)