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SDGsのターゲット、「順調に推移」は前年の15%→17%に 国連の「SDGs報告2024」

SDGsのターゲット、「順調に推移」は前年の15%→17%に 国連の「SDGs報告2024」
「The Sustainable Development Goals Report 2024」の表紙
編集部

国連は6月28日、SDGsの目標ごとの達成状況をまとめた「The Sustainable Development Goals Report 2024(SDGs報告2024)」を発表した。ターゲットのうち「順調に推移している」と言えるのは17%のみで、前年の報告書の15%からわずかに伸びたものの、壁に直面している。「大規模な投資と行動の拡大がなければ、SDGsの達成は困難なままだ」と訴えている。(編集長・竹山栄太郎)

2030年も「5億9000万人が極度の貧困」

報告書は、国連の「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」に先駆けて、毎年発表されている。2024年のHLPFは7月8~17日に開催される。

今回の報告書では、新型コロナウイルスのパンデミック、エスカレートする紛争、地政学的緊張と気候変動が「SDGsの進捗(しんちょく)を大きく妨げている」と指摘。169ターゲットのうち評価可能な135ターゲットについてみると、「順調に推移している」と言えるのは17%にとどまり、3分の1以上が「停滞」か「後退」していると警鐘を鳴らしている。

ターゲット別の進捗
「The Sustainable Development Goals Report 2024」p4をもとに編集部作成

目標別にみると、例えば目標1「貧困をなくそう」では、2022年には世界人口の9%にあたる7億1200万人が極度の貧困状態にあり、この数は2019年と比べて2300万人増えている。そして、現在の傾向が続けば、2030年までに5億9000万人が極度の貧困状態のままになる可能性があるという。

目標2「飢餓をゼロに」に関しては、飢餓に直面する人は2022年に6億9100万~7億8300万人に及び、2019年と比べても1億人以上増えていることや、2022年時点で約60%の国が中程度か異常に高い食料価格に直面していることが指摘されている。

また、目標13「気候変動に具体的な対策を」をめぐっては、2023年が観測史上もっとも暑かった年となり、世界の平均気温が産業革命前の水準を約1.45度上回ったことや、2022年の世界の温室効果ガス排出量が57.4Gt(ギガトン、CO2換算)で過去最高になったことに触れた。そのうえで、「気温上昇を1.5度に抑えられる可能性はわずか14%であり、この10年間で排出量を大幅に削減するために、早急で迅速な行動をとることが急務だ」と強調している。

再エネ普及など光も

一方で、報告書はSDGsに関する成功例も紹介している。例えば再生可能エネルギーが普及し、世界の最終エネルギー消費量全体に占める割合が2015年の16.7%から2021年には18.7%に増加していることや、女子の初等教育と中等教育の修了率が、多くの地域で男子を上回っていることなどが挙げられている。

このほか、HIVの新規感染者数が2022年には推定130万人となり2015年と比べて27%減少したことも指摘されている。

国連のグテーレス事務総長は、「この報告書は、今すぐ前進を最大化するためには、より強力で効果的な国際協力が緊急に必要であることを強調している。貧困をなくし、地球を守り、誰一人取り残さないという2030年の約束を、あと6年以上も残して、決してあきらめてはいけない」とのコメントを報告書の序文に寄せた。

(2024.7.18更新)メイン画像を報告書の表紙に差し替えました。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局で勤務後、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、副編集長を経て2024年4月から現職。
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