おカネも進路も教えます! イマドキ留学体験記

「今留学にいくべき?」親の一言をプレゼンで説得 資金の半額を自分で用意しアメリカへ

2024.06.20

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森泉萌香
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グローバル化の拡大や新型コロナの流行を経て、留学の形も変わってきています。世界各国に留学した学生たちが、かかった費用やその後の進路も含め、経験をつづります。最終回の今回は、立命館大法学部法学科4年の渕上菜紘さん。学内外の奨学金やアルバイト代で留学費用の半額を工面し、2022年9月から約半年間、アメリカ・カリフォルニア大デービス校に留学しました。(国際交流サークルの友人と観光する渕上さん〈写真左〉=本人提供)

つらい思い出、研究に反映して

私が留学していたカリフォルニア大デービス校は、農業研究が有名な大学であり、夜は星がとてもきれいな、緑豊かな場所にあります。デービスはカリフォルニアの州都であるサクラメントの都市で、その近くにあるウッドランドという町でホストファミリーと暮らしました。6カ月の留学生活で、特に印象に残っていることは二つあります。

一つはサークル活動です。四つのサークルに所属し、テストの週以外は週に7回どこかのサークルで常に人と話す日々を送りました。

特に印象的だったのは国際交流サークルでの4泊5日のカンファレンスです。約800人の学生が参加し、メンタルヘルスや心理的安全について話し合いました。法律を学ぶ学生とLGBTQ、死刑制度、人工妊娠中絶といったトピックについても議論する中で、環境、法制度、宗教観などによって考え方に幅が出ることに驚き、身をもって価値観の多様さを感じました。日本で考えていた当たり前が当たり前ではないと気づかされました。

国際交流サークルのカンファレンスで友人たちと登山をする渕上さん〈写真右端〉=本人提供
国際交流サークルのカンファレンスで友人たちと登山をする渕上さん〈写真右端〉=本人提供

オーケストラのサークルでは、中学から続けてきたフルートを担当しました。技術的な問題はありませんでしたが、英語でのコミュニケーションの面で演奏についていくのに苦労しました。

定期演奏会前のステージ=本人提供
定期演奏会前のステージ=本人提供

たとえば、表現について指揮者から尋ねられた時、自分の思い描くイメージを100人の団員がいる状況下で、英語で伝えることのプレッシャーは大きく、最初はとても苦労しました。しかし、練習を続けていくうち次第に合奏に溶け込めるようになり、団全体で友達もできました。

また、英語の表現がわからなくても、一緒に楽器を吹いて音を重ねれば通じ合えることも多く、音楽は言語を超えて思いを伝えてくれるのだと実感しました。

二つ目に、ホストファミリーとの暮らしです。メキシカンアメリカンのホストマザーとホストファーザー、そして28歳の娘がいる3人家族の家庭で生活をしました。

ここでの暮らしはとても複雑で、ホストマザーからいじめを受ける生活をしていました。当時の私には自分からステイ先の変更を訴えることもできず、ステイ先に帰らない、もしくはホストファーザーと2人で過ごす時間を楽しみに過ごしていました。

その中で支えられたのは、きついときに話を聞いてくれる友人たちと、最終的に私をほかのホストファミリーにアレンジしてくれた大学の職員の方の存在でした。

私は今まで大学で社会保障法を専攻しており、家庭内での虐待やDV、家族における戸籍制度などについて学んできました。そのなかで、法律的な保障のみを考え、実際に保護を受ける側の実生活は少し想像がしにくい状態でした。

しかし、今回の経験で家庭内がいかに複雑で、外の世界を知らない限り助けの声を上げることが困難であるかを学びました。私たちは家族の在り方を一つしか知りません。それが周りの常識と異なることにどうやって気づくのだろうと考えさせられました。

良いことも悪いことも経験した留学生活でしたが、環境にもとづく価値観や考えの違い、その違いの複雑さを体感しました。そして、自分の専攻分野との学びを掛け合わせ、現場の複雑さを感じることができたと前向きに捉えています。

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