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米はお金だ!という時代があった

久保田博幸金融アナリスト
(提供:アフロ)

 「米は力だ!」をキャッチコピーにしたアニメーションが始まった。タイトルは『天穂(てんすい)のサクナヒメ』。

 農作物の豊穣を司る神サクナヒメが大自然の中で仲間と共におこなう米作りを通じて、成長しながら、ヒノエ島を支配する鬼たちに立ち向かっていく爽快アクションストーリー。農林水産省とのコラボも決定しているそうである。

 この米は私たち日本人にとっても大変重要なものである。過去には「米はお金だ!」という時代があった。

 日本における「金利」の起源は世界史の中の金利の起源と同様に稲の貸し借りとなる「出挙(すいこ)」だといわれている。

 貯蔵した初穂の稲を春に種籾として貸し出して、秋の収穫時に神へのお礼として五把の稲を利息の名目でお返しするというのが「出挙」で、これが日本における金利の起源である。

 中国では古くからこういった利子付き貸借の慣習が存在し、日本でも同様の慣習が行なわれていた。文献などでは、日本書紀に「貸稲」の語が登場し、これが出挙のはじまりではないかとの見方もあるが、実際には757年に施行された養老令において「出挙」の語が現れ、これが制度化された日本の金利の起源だとみなされている。

 出挙という制度のそもそもの目的は、農民の生活を維持していくためのひとつの手段であった。出挙には国司が官稲を用いて行う「公出挙」と、個人が行う「私出挙」とがある。律令制のもと、出挙��繁雑な事務を行わなくとも、強制的な公出挙を行うことで、多額の収入を確保することができたことなどから、国家の重要な財源となっていった。金利に当たる雑税のことは「利稲」と呼ばれていたが、その利息は一般に公出挙で50%という高い利息であった。

 豊臣秀吉は太閤検地を行うことにより、米を経済の基礎とする石高制を取り入れ、年貢についても米納制の導入を図った。その後、天下統一を果たした徳川家康は全国支配を確固なものにするため、963年に皇朝十二銭の発行が停止されて以来となる中央政府による貨幣を鋳造し、貨幣の統一に着手した。

 ただし、武士の収入源はお金ではなく米であった。

 このため、それをあらためてお金に換える必要がある。大坂には諸藩が設けた蔵屋敷に年貢米が送られる。米の売却は蔵屋敷での競争入札で行う。落札した業者は代金の一部を支払い、蔵屋敷発行の米切手(米手形)を受け取り、一定期日以内に米切手と残銀を持参して蔵屋敷から米を受け取る仕組みとなっていた。

 この取引が時代とともに少しずつ変わり、米切手が転売されていくようになり、米切手そのものが米現物の需給に関係なく売買の対象となっていった。

 大阪の堂島米会所では、米切手を売買するいわゆる現物取引の「正米商い」に加えて、米の先物取引である「帳合米商い」が行われた。これが現在の金融取引における「先物」の元祖とされているものである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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