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ファーウェイ、Appleとの対決鮮明 中国旗艦店急増

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
中国・深センにあるファーウェイの旗艦店(写真:ロイター/アフロ)

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)が旗艦店戦略を刷新し、米アップルとの対決姿勢を鮮明にしている。

かつて米政府の輸出規制を受け、スマートフォン事業が壊滅的な状況に陥っていたが、部品の国内調達を進めて回復を果たした。出店数はまだアップルに及ばないものの、このペースで出店が進めば、やがて追いつくとみられる。

アップル、中国本土で47店舗運営 ファーウェイ11店

中国は販売台数ベースで世界最大のスマホ市場である。現在アップルが中国本土に構える直営店の数は47店。英ロイター通信によれば、これに対しファーウェイは11店舗にとどまる。ファーウェイは2020年に初めて直営店をオープンし、その後出店計画を大規模に進める予定だった。だが、米政府による制裁の影響で品不足が生じ、進展が遅れた。

ファーウェイはかつて、スマホ出荷台数で世界1位に浮上していた。だが、2019年に当時のトランプ米政権が同社を安全保障上の脅威とし禁輸措置を講じた。ファーウェイは半導体など重要部品の供給制約を受けてスマホ生産が減少。同社の中国におけるスマホシェアは2020年半ばに29%あったが、2年後にわずか7%に低下した。

ファーウェイ、戦略転換で販売店拡大

だがファーウェイは、そうした状況に対処すべく半導体などの部品の自社開発を進めた。ロイター通信によると、ファーウェイは戦略を転換し、販売店拡大と独自半導体の開発によって攻勢を強めている。現在も特定モデルの供給不足という問題を抱えるものの、状況は大幅に改善した。

同社は、2023年12月から2024年2月までの3カ月間で、中国主要都市に4つの旗艦店を新規オープンした。香港の調査会社カウンターポイントリサーチのアナリストは、「(ファーウェイは)今後20店舗以上の旗艦店を開設するだろう。その後、最終的にアップルに追いつくことになる」と予測している。

ファーウェイは販売代理店の拡大にも力を入れている。積極的な交渉を行っており、自社スマホの高い利益率をアピールしている。独占パートナーを増やすため、一部の代理店と排他的契約を結んでいる。

中国の市場調査会社GeoQによると、2023年1〜10月にファーウェイ製品の販売ライセンスを得た店舗数は5200店を超え、その半数以上が三線都市、四線都市と呼ばれる地方都市の店舗だった。こうして同社は中国本土で販売網を拡大している。

ファーウェイの復活、アップルに打撃

ファーウェイの積極的なマーケティング攻勢はアップルへの脅威になるといわれている。米調査会社のIDCのデータによると、24年1〜3月期の中国における「iPhone」の出荷台数は、前年同期比6.6%減の1080万台へと落ち込んだ。一方、ファーウェイは2.1倍の1170万台となり、中国第2位のスマホメーカーに浮上した。

ファーウェイの復活によって打撃を受けたのはアップルだけではないようだ。シンガポールに本部を置く調査会社カナリスのアナリスト、トビー・ジュー氏は、「小米(シャオミ)、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)といった中国メーカーはすべて影響を受けている」と話す。ただし、「現時点で、最大の打撃を受けているのはアップルだ」(同)という。そして、その影響は中国本土を超えて広がり始めていると、同氏は指摘する。

筆者からの補足コメント
ファーウェイの最新スマホ「Pura 70 Ultra」も中国で評判が良いようです。ロイター通信によると、この端末の価格は9999元(約21万4000円)〜。中国での「iPhone 15 Pro Max」の価格と同水準です。一方、韓国サムスン電子やシャオミは、こうした高価格帯端末の価格をファーウェイやアップルよりも低めに設定しています。高価格帯の需要低迷を受けた措置だといいます。カナリスのアナリストによると、ファーウェイ製スマホは全体の70〜80%が実店舗で販売されているとのこと。これに対しiPhoneの実店舗販売比率は約40%。つまり、アップルは6割がオンライン販売です。

  • (本コラム記事は「JBpress」2024年5月22日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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