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円形脱毛症治療の新展開:ミノキシジルの効果と最新研究

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

円形脱毛症治療の新展開:ミノキシジルの効果と最新研究

円形脱毛症は、世界人口の約2%が経験する比較的一般的な脱毛症です。突然、円形や楕円形の脱毛斑が現れることが特徴で、多くの方に心理的な影響を与える疾患として知られています。最近、この治療法に新たな進展がありました。今回は、円形脱毛症治療におけるミノキシジルの役割について、最新の研究結果をもとにご紹介します。

【ミノキシジルとは?円形脱毛症治療への応用】

ミノキシジルは、もともと血圧を下げる薬として開発されましたが、副作用として発毛効果があることが分かり、現在では脱毛症治療薬として広く使用されています。円形脱毛症に対しても、その効果が注目されています。

ミノキシジルには、外用薬(塗り薬)と内服薬の2種類があります。外用薬は、1%、2%、5%の濃度の溶液やフォームタイプがあり、1日1回または2回塗布します。内服薬は錠剤として服用します。

【研究結果が示す:ミノキシジルの効果】

最新の研究によると、ミノキシジルを使用した円形脱毛症患者の63%以上に何らかの改善が見られました。特に注目すべきは、以下の点です:

1. 外用ミノキシジル単独療法:

755人の患者を対象とした研究では、57%の患者に改善が見られました。これは対照群と比較して統計的に有意な効果でした。

2. 内服ミノキシジル単独療法:

89人の患者を対象とした研究では、32人(約36%)に改善が見られました。ただし、サンプル数が少ないため、統計的な有意性は確認できません��した。

3. 内服ミノキシジルとJAK阻害薬の併用療法:

101人の患者を対象とした研究では、86人(約85%)に改善が見られ、平均で86.7%のSALTスコア(脱毛の程度を示す指標)の減少が確認されました。

これらの結果から、ミノキシジルは円形脱毛症の補助的治療法として有望であることが分かります。特に、JAK阻害薬との併用療法では高い効果が期待できそうです。

【日本での円形脱毛症治療:ミノキシジルの位置づけ】

日本では、円形脱毛症の治療にステロイド外用薬やDPCP(ジフェニルシクロプロペノン)療法などが一般的に用いられてきました。ミノキシジルは、主に男性型脱毛症(AGA)の治療薬として知られていますが、円形脱毛症への応用も徐々に広がっています。

日本の皮膚科医療において、ミノキシジルの円形脱毛症治療への活用はまだ十分とは言えません。今回の研究結果を踏まえ、特にJAK阻害薬との併用療法については、日本でも検討が必要でしょう。

ただし、ミノキシジルの使用には注意点もあります。副作用として、頭皮の刺激や赤み、まれに全身性の副作用が報告されています。また、効果が現れるまでに数か月かかることもあるため、根気強く継続することが大切です。

円形脱毛症は、外見の変化による心理的ストレスも大きい疾患です。治療と並行して、心のケアも重要です。皮膚科医との相談はもちろん、必要に応じて心療内科や精神科との連携も検討しましょう。

最後に、円形脱毛症の治療法は日々進化しています。ミノキシジル以外にも、JAK阻害薬や免疫療法など、新しい治療法の研究が進んでいます。自分に合った最適な治療法を見つけるためにも、定期的に皮膚科を受診し、最新の情報を得ることをおすすめします。

参考文献:

1. Raval RS, et al. The use of minoxidil in the treatment of alopecia areata: A systematic review. J Am Acad Dermatol. 2024.

2. Gip L, et al. Alopecia areata. A follow-up investigation of outpatient material. Acta Derm Venereol. 1969;49:180-188.

3. Blair HA. Ritlecitinib: first approval. Drugs. 2023;83(14):1315-1321.

4. Wambier CG, et al. Combination tofacitinib and oral minoxidil treatment for severe alopecia areata. J Am Acad Dermatol. 2021;85(3):743-745.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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