ラーメン業界の革命児「一蘭」幹部に聞く 最高益をたたき出した「3つの要因」
ある平日の午後、福岡市・中洲にあるラーメン店「一蘭本社総本店」を訪れた。ランチタイムはとうに過ぎているが、店の前には人だかりができている。スタッフが手慣れた様子で行列を整理する。 【写真を見る】約500円のカップ麺「一蘭 とんこつ」 これは本店に限った話ではない。東京の渋谷や新宿などの店舗でも似たような光景が見られる。一蘭のある社員は、気軽に自分の店へラーメンを食べに行けないのが残念だと苦笑する。ほぼ全ての飲食店がコロナ禍で苦しんだわけだが、ここにはその“後遺症”は微塵もなかった。 「コロナ禍からの戻りが想像以上に早くて。特にインバウンドの伸びがすさまじい」 こう話すのは、一蘭ホールディングスで事業統括責任者の立場にある山田紀彰氏。表情からうかがえる自信はきちんと数字にも表れている。2023年度の売上高は過去最高の355億6000万円を記録。2019年度は288億円だったため、コロナ禍前の水準に戻るどころか、一気に追い抜いてしまった。 一蘭はなぜ業績をあっさりと回復できたのか。その背景にはコロナ禍での仕込みがあり、一蘭ならではの強みが大いに生きたのだった。
コロナ禍前後で外国人の客層に変化あり
過去最高益をたたき出した理由。取材を通じて、主に3つの要因に集約されることが分かった。インバウンド、物販、そして店舗システムである。 1つ目はインバウンド需要の取り込みだ。海外観光客自体はコロナ禍前から多かった。ただ、その内訳は様変わりしている。山田氏によると2019年までは中国人観光客が大挙をなしてきて、特に大阪の店舗はあふれ返っていた。その後、コロナ禍でインバウンドはゼロに。2022年ごろから再び増え始めると、韓国人が大半を占めるようになった。 これには理由がある。一つは韓国と福岡の距離の近さ。加えて、BTSやSEVENTEENといったK-POPグループのメンバーが来店して、その様子をSNSに投稿した。それによって人気が加速した。 一蘭が仕込んだわけでもなく、あくまでも偶然の産物ではあったが、韓国人が急増している状況を受けて、いっそう海外顧客の細かな要望に応えるシステムの強化を進めている。 なお、実は一蘭の外国人対応は今に始まったことではなく、20年ほど前から外国語のメニューや、オーダー用紙の多言語化に取り組んでいた。そのため、非常に入りやすいラーメン店として外国人の間でも知られた存在であった。