グローバル ガバナンス: AI に関する目標と学び

グローバル ガバナンス: AI に関する目標と学び

ブラッド スミス (Brad Smith) 副会長 兼 プレジデント
ナターシャ クランプトン (Natasha Crampton) 責任ある AI 担当 最高責任者

※本ブログは、米国時間 5 月 17 日に公開された “Global Governance: Goals and Lessons for AI” の抄訳を基に掲載しています。

昨年は AI 政策をめぐる議論が広がっていくなか、議論の途中で意外な略称が繰り返し話題に上るようになりました。普段よく聞く、新しい AI モデルや機械学習用語に関連した略語ではなく、民間航空、原子力、国際資本フローを管理運営している国際機関の頭文字をとった略称です。

そういった話題は私たちの好奇心をかき立てます。民間航空を管理運営する手法は、格納庫での組み立てや航空管制官による誘導がなされることのない一連のテクノロジとどのように結びつくのか、もっと深く知りたいと興味を持ちました。また、道具として有力視されながらも兵器としてしか使われてこなかったテクノロジを規制するために、地政学的にまったく異なる時代に生まれた原子力利用に関する公約について学びたいと思いました。

事実、私たちが長年の歴史から学んできたのは、テクノロジがどのように世界を変えるかは、いかに有効にガバナンスされるかによってある程度決まるということ、そして国境を越えるテクノロジに対して国際的なガバナンスが必要不可欠であるということです。

マイクロソフトは本日、「グローバル ガバナンス: AI に関する目標と学び」(Global Governance: Goals and Lessons for AI) を公開し、さまざまな分野の国際機関に対する外部からの見解を紹介するとともに、グローバルな AI ガバナンスの目標と枠組みについて、当社の考えを示しました。ケーススタディや分析を用いながら、国際民間航空機関 (ICAO) や金融安定理事会 (FSB) などの機関について、専門家が歴史や発展を解説し、グローバルな AI ガバナンスの参考になるよう、成功事例や課題に関する見識を共有しています。

専門家の深い洞察から、私たちは AI に関する次の 3 つの高度な学びを得ました。

  • 民間航空や国際資本フローと同様に、AI ガバナンスには、業界標準、国内規制、国際ガバナンスという相互に関連する 3 つのレイヤーが存在する。
  • 国際ガバナンスのレイヤーでは、世界的に重要なリスクガバナンス、規制の相互運用性、包括的な進歩という 3 つの成果が AI にとって重要である。
  • このような成果を達成するには、グローバルリスクの監視と管理、基準の設定、科学的コンセンサスの構築、資源への適切なアクセスの強化という 4 つの国際ガバナンス機能が必要である。

以下では、今回寄稿していただいた専門家の音声コンテンツ (英語) を再生し、私たちがこうした学びを得るのに役立った専門的な洞察を直接聞くことができます。

元 CERN 事務局長でオックスフォード大学名誉教授のクリス ルウェリン スミス (Chris Llewellyn Smith) 氏からは、欧州合同原子核研究機関 (CERN) は資源へのアクセスの実現を中核に据えているということを学びました。

 

科学的コンセンサスの構築というガバナンス機能について、気候変動に関する政府間パネル (IPCC) が好例を示しており、IPCC 筆頭著者のダイアナ リバーマン (Diana Liverman) 氏と、IPCC 副議長 兼 筆頭著者のユバ ソコナ (Youba Sokona) 氏から話を聞きました。IPCC と国連との繋がりを考えながら、科学に基づく意思決定を政治的プロセスに取り入れる活動の利点と欠点について語っています。

 

カリフォルニア大学サンタバーバラ校助教授のジュリア モース (Julia Morse) 博士からは、さまざまな国際機関が基準設定の役割を担っている一方で、役割の果たし方はガバナンス構造の形式によって異なっていることを学びました。モース博士は、本書の「高度に制度化された世界」(“highly institutionalized world”) についての章に寄稿し、第二次世界大戦直後に生まれた国際機関と近年に生まれた国際機関とを比較しています。

 

国際民間航空機関 (ICAO) は、主に加盟国��査を通じて国内レベルで遵守される基準を設立するために、政府と産業の専門家の協力を促しています。基準を実施する強力なインセンティブは、安全およびセキュリティの責務から経済的原動力まで多岐にわたるということを、航空法専門家のデヴィッド ヘファーナン (David Heffernan) 氏とレイチェル シュワルツ (Rachel Schwartz) 氏が詳しく説明しています。

 

ペンシルバニア大学助教授のクリスティーナ パラジョン スキナー (Christina Parajon Skinner) 氏からは、金融活動作業部会 (FATF) および金融安定理事会 (FSB) も基準設定の役割を担っていることを学びました。一方で、グローバルな金融機関の進化は、特にリスクの監視と管理の機能をめぐる、最近の非公式な国際ガバナンス構造を象徴しています。

 

国際原子力機関 (IAEA) は、正式な条約を基盤としていますが、設立以来発展を遂げてきました。核兵器開発のリスクを監視・管理する権限を持つことで知られる IAEA は、安全およびセキュリティ基準の策定や加盟国への技術支援も行うように進歩してきたことを、メルボルン大学のプリンシパルフェローで、国連の軍縮に関する諮問委員会の元委員であるトレバー フィンドレー (Trevor Findlay) 博士が教えてくれました。フィンドレー博士はまた、原子力産業が最近まで IAEA に限定的にしか関与していなかったことを指摘しています。

 

こうした専門家の洞察は、国際ガバナンスの重層的かつ進化的で、相互に関連する性質を明確に示しており、グローバルな AI ガバナンスに向けて情報に基づく道筋を立てる上で役立ちます。高い安全性とセキュリティの信頼できる AI に向けた国内の取り組みを相互運用可能なものにすること、AI の恩恵を広く分配すること、世界的に重大なリスクが有効に管理されることを確実にするために、世界規模で有効なガバナンスの必要性が高まっています。

今日、多くの政府、国際機関、公共および非営利セクターが、こうした目標に向けて取り組んでいます。とはいえ、まだ AI ガバナンスが初期段階にあることに変わりはありません。本書で提示した成果を達成するためには、進化するグローバル ガバナンスのシステムを導く永続的な枠組みと、過去からの教訓を生かした新たなアプローチが必要です。

本書と専門家の深い洞察が、そうした取り組みに役立つことを願っています。

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