ウクライナ女性が日本に来て一番困った“暗黙のルール”とは?「また連絡します」と言われて
ロシアによる軍事侵攻が長引くウクライナ。各地で戦闘が続き多くの市民が不安な日々を送っていますが、このような平和が侵されることになる前の2006年、19歳の時に音楽活動の拠点を日本に移したウクライナの民族楽器「バンドゥーラ」奏者・歌手であるカテリーナさんという女性がいます。
祖国ウクライナの本来の美しい大地や、そこに生きる人々の姿を多くの人に知って欲しいという思いをこめた彼女の著書『ウクライナ女性の美しく前向きな生き方 美人大国・ウクライナ女性の衣食住と恋愛・結婚のすべて』(徳間書店)が上梓され、静かな感動を呼んでいます。
ウクライナ本来の文化や人々のライフスタイルや、戦争で変わった価値観・考え方がつづられた本書から、来日したカテリーナさんが日本語のニュアンスと真意を読み取るのに苦労したエピソードを紹介します。
(本記事は『ウクライナ女性の美しく前向きな生き方 美人大国・ウクライナ女性の衣食住と恋愛・結婚のすべて』(カテリーナ著・徳間書店)より抜粋・構成しています)
日本に来て仕事上で戸惑ったことは、いくつかあります。一番困ったのは、「イエス、ノー」をはっきり言わないことです。
例えば、面接に行ったときに、「じゃあ、また連絡します」と言われたら、私の感覚では「後日、連絡してくれる」と文字通り受け止めていました。でも、待てど暮らせど連絡がありません。
私から再度、担当者に連絡を入れると、電話口から渋い声で、「すみません、今回はご縁がなかったということで……」とお断りの返事があったことがありました。
当初は「いったい、どういうこと?」と真意を理解できずにいましたが、日本に来てから幾度か同じようなことがあり、仕事の中で「また連絡させてください」と言われたら、お断りの意味だと理解できるようになりました。
そのことがあってから、日本では、「お断りの暗黙のルール」があることを知りました。例えば、「また連絡します」「ちょっと考えさせてください」は、断りの意味だと理解しました。
ウクライナでは、このようなコミュニケーションはありません。ダメならダメと伝えるし、必要なければはっきりと「いりません」と相手に伝えます。
私自身、しばらくは日本のルールに疑心暗鬼になってしまい、「どこまで言っていいのだろう。どこまで相手の言葉を信じていいのだろう」と戸惑いました。
とくに困ったのが、仕事上のお金の交渉です。私は日本での音楽活動を一人で始めたので、「仕事の条件やスケジュール、ギャランティ、支払い日」などはどのタイミングで確認すればいいのか、よくわかりませんでした。
日本人の知人からは、「日本は最初にお金の話をするのははしたない、と思う文化がある」と聞いていました。
でも、私にはマネージャーがいるわけではないので、お金のことを含めてすべて一人で管理しなければなりません。
活動し始めの頃は、ギャラ��話を最初にできなかったために、「このくらいの金額でやります」と伝えると、相手のプロモーターさんから、「え? そんなに高いの?」「じゃ、このくらいでいかがですか?」と、最初に提示した金額からどんどん下げられてしまうことがたびたびありました。
また、最初にギャラのことをきちんと確認せずに、ライブが終わった後で、ギャラの話をすると、「主催者からギャラの話は聞いてないけど。今回はボランティアじゃないの?」と言われて、結局、無料でライブ出演したこともありました。
また、「チャリティでやってほしい」と言われて、それは「ノーギャラでやって」という意味だとあとから知った、ということも……。
そのことを夫に相談したら、「そのやり方は良くないね。自分の価値を下げてはいけない」と教えてもらい、自分のギャラの相場をきちんと決めて、最初から交渉するようになりました。
もちろん、最初のうちは日本語のニュアンスが理解できずに何度も失敗しながら、交渉術を覚えていきました。
日本語のニュアンスと真意を読み取るのに苦労した
「日本は最初にお金の話をするのははしたない、と思う文化がある」?!
1
2